再エネ賦課金は今後も増え続ける?環境省が再エネ賦課金の予想を公表
こんにちは!
「太陽光発電と蓄電池の見積サイト『ソーラーパートナーズ』」記事編集部です。
この記事では、太陽光発電を設置しているかどうかにかかわらず、全世帯に関係のある再エネ賦課金についてまとめました。
2024年度の再エネ賦課金は3.45円/kWh
年度 | 再エネ賦課金 単価 |
標準家庭の 負担額※1 |
---|---|---|
令和4年度(2022年度) 2022年4月1日~2023年3月31日 |
3.45円/kWh | 1035円/月 |
令和3年度(2021年度) 2021年4月1日~2022年3月31日 |
3.36円/kWh | 1008円/月 |
令和2年度(2020年度) 2020年4月1日~2021年3月31日 |
2.98円/kWh | 894円/月 |
平成31年度(2019年度) 2019年4月1日~2020年3月31日 |
2.95円/kWh | 885円/月 |
平成30年度 2018年4月1日~2019年3月31日 |
2.90円/kWh | 870円/月 |
平成29年度 2017年4月1日~2018年3月31日 |
2.64円/kWh | 792円/月 |
平成28年度 2016年4月1日~2017年3月31日 |
2.25円/kWh | 675円/月 |
平成27年度 2015年4月1日~2016年3月31日 |
1.58円/kWh | 474円/月 |
平成26年度 2014年4月1日~2015年3月31日 |
0.75円/kWh | 225円/月 |
平成25年度 2013年4月1日~2014年3月31日 |
0.40円/kWh | 120円/月 |
平成24年度 2012年4月1日~2013年3月31日 |
0.22円/kWh | 66円/月 |
標準家庭※1:一ヶ月の電力使用量が300kWh(月7,600円程度)の家庭を想定
再エネ賦課金は今後どうなる?
再生可能エネルギー促進賦課金(再エネ賦課金)は、再生可能エネルギーの普及を推進するためには大いに役立つのですが、企業や家庭等、電気の使用者としての立場から見ると、毎月の電気料金の上昇につながるため、批判の対象にもなっています。
実際に、再エネ賦課金はどのように計算され、どのような目的で使われているのでしょうか?
また、再エネ賦課金は今後もずっと上昇していくのでしょうか?
今回はこれらの疑問にお答えしたいと思います。
再生可能エネルギー促進賦課金が売電制度を支えている
再生可能エネルギー促進
2009年に始まった売電制度によって、太陽光発電や風力発電などで発電した電気は、通常買う時の金額(買電価格)よりも高い売電価格で東京電力などの電力会社に、10年(もしくは20年間)売り続けることができます。
売電価格が高く設定されていることで、再エネを設置する費用は十分回収することができ利益が出ます。
再エネの普及を促進するために、売電価格は高く設定されているのです。
売電制度に関する詳しい説明はこちら。
高い売電価格のために必要な費用は電力会社が負担するわけではなく、国民全員で負担することになっています。
電力会社は毎月、通常の電気料金と併せて、この負担金(賦課金)を企業や家庭から回収しているのです。
自分が毎月、いくら賦課金を負担しているのかは、毎月の「電気ご使用量のお知らせ」の中に含まれる「再エネ発電賦課金」や「再エネ促進賦課金」等といった項目で確認することができます。
再エネ賦課金は太陽光賦課金!?
再エネ賦課金は2012年以前は太陽光発電促進賦課金(太陽光発電サーチャージ)という名前でした。
なぜなら、それまで太陽光発電以外の再生可能エネルギーがほとんど稼働していなかったからです。
2012年に売電制度が改正されたタイミングで、太陽光発電以外の風力発電やバイオマス発電なども増加し、名称も再エネ賦課金と改められました。
ですが名称が変わった後も、再エネ賦課金のほとんどは太陽光発電の売電を賄うために使われています。
下の円グラフは、認定設備が全て運転開始した場合の、電源毎の賦課金額の割合を表したものです
総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会(第4回)‐配布資料 資料8|経済産業省
円グラフを見るとわかりますが、全体のおよそ8割を非住宅(産業用)の太陽光が占めています。
2012年から2015年までの3年間は産業用太陽光発電は特別優遇期間が設定されており、かなり高い利益設定がされていたため、一気に普及が進みました。
その結果、産業用太陽光発電が突出して多くなっているのが現状です。
再エネ賦課金の計算方法は?
次に、賦課金単価(1kWh当たりの賦課金)がどのように計算されるのか、ということについて見てみましょう。
再エネ賦課金単価は、毎年度、年度開始前に以下の計算式によって計算され、告示されることになっています。
年度が始まる前に当該年度の価格を決めるため、式の右辺は全て見込みの費用、電力量です。
賦課金単価 (円/kWh) |
= | 買取費用(円)-回避可能費用(円)+費用負担調整機関事務費(円) |
---|---|---|
販売電力量(kWh) |
買取費用
買取費用の見込みは、国の委員会で別途決められた買取価格に、当該年度に見込まれる買取量を乗じて算出します。
回避可能費用
電力会社としては、事業者や家庭から再生可能エネルギーを買い取ることによって、その買取量に相当する分を火力などで自ら発電する必要がなくなりますが、この浮いた発電費用まで使用者側が負担する必要はありません。
そこで、電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより支出を免れた燃料費等の費用を回避可能費用とし、電気の使用者が負担する賦課金から差し引きます。
費用負担調整機関事務費
必要な事務的な経費
販売電力量
販売電力量の見込み値です。
このようにして賦課金単価を算出します。
再エネ賦課金は今後もずっと上昇していくのか?
賦課金の計算式からもわかる通り、賦課金は買取対象となる再生可能エネルギーの累積導入量が増えるにしたがって増えていくことになります。
このため、固定価格買取制度が継続している限り、今後もしばらくは増えていくことでしょう。
賦課金の将来予測については、環境省が独自に試算していますので、参考までにご紹介します。
このグラフは、2030年まで固定価格買取制度が継続することを前提とし、環境省が賦課金単価の推移を推計したものです。
(「高位」は導入量が最も多いケース)
2030年までの導入量に対する賦課金単価の推移 平成25年度2050年再生可能エネルギー等分散型エネルギー普及可能性検証検討報告書(本編5章)|環境省
これによると、いずれのケースでも再エネ賦課金は2030年まで上昇した後、下がっています。
これは、再生可能エネルギーの固定価格での買取期間が10~20年で終了するためです。
例えば2014年に導入された住宅用太陽光は2024年には買取期間が終了し、2024年以降の賦課金は発生しません。
つまり固定価格買取制度自体がその役割を終えて終了すると、今度は買取対象の再生可能エネルギーが減る一方ですので、ずっと下がっていくことになります。
再エネ賦課金の恩恵は太陽光発電などを設置できる人だけが受けられる
国民全員から一律で徴収された再エネ賦課金は、太陽光発電などを設置した人の利益に充てられています。
バイオマス発電や風力発電などは、特別な発電装置や広大な土地を持っていないとそもそも設置することができませんが、太陽光発電は持ち家の屋根に設置することもできるので、最も消費者に身近な再エネだといえます。
再エネ賦課金はどうせ一律で徴収されるのですから、太陽光発電を設置できる環境があるのに設置しないのはもったいないと思います。
実際、太陽光発電によって得られる利益が大きいため、設置できない人たちから「ズルい!」と思われているくらいです。
太陽光発電をはじめとする再エネは、地球温暖化防止や、たった4.4%しかない日本のエネルギー自給率※を改善するために、国が主導で進めているエネルギー政策です。
※2010年時点の原子力発電を除く日本のエネルギー自給率はわずか4.4%。日本のエネルギーは9割以上を海外からの輸入に頼っており、対外的なリスクを抱え続けている状態です。
次の世代に深刻なエネルギー問題を残さないためにも、国は多少不平等が起こるのは承知で、売電制度による後押しを行っているのです。
再エネ賦課金を適切に分配する費用負担調整機関
ちなみに再エネ賦課金は、電力会社が企業や家庭から使用量に応じて一律回収していますが、実際の再生可能エネルギー導入量は、地域によって異なるため回収すべき金額は変わるはずです。
かと言って、地域の再生可能エネルギー導入量に応じて企業や家庭の負担金を増減させると、不公平感が生じます。
この問題を解消するため、費用負担調整機関という機関が設置されています。
賦課金を回収した電力会社は、それを直接再生可能エネルギー発電事業者に支払うのではなく、この費用負担調整機関に一旦納付します。
費用負担調整機関は、全国から集められた納付金を使って、各電力会社の再生可能エネルギーの買取費用の実績額から回避可能費用を差し引いた金額を交付します。
賦課金を回収するのが電力会社、それを管理し、適切に分配するのが費用負担調整機関というわけです。
費用負担調整機関の役割 回避可能費用の算定方法 及び 設備認定制度の在り方について(p.5)|経済産業省 資源エネルギー庁
まとめ
これまで見てきたように、賦課金は買取対象となる再生可能エネルギーの導入量が増えれば増えるほど増加していきます。
ですが最近は、再エネ賦課金の負担が大きくなることへの懸念が強まっており、想定を超えて導入が進むと政府が導入に一定の歯止めをかけることになると予想されます。
具体的には、先の2030年におけるエネルギーミックスの議論でも出てきましたが、政府としては、2030年時点での再生可能エネルギーの買取費用を約3.7~4.0兆円に抑えたいと考えているようです。
その際に、どのように歯止めをかけるのかということは、検討すべき課題の1つでしょう。
住宅用は非住宅用に比べて導入規模が小さく、導入スピードも緩やか、さらに買取期間は半分の10年間です。
導入に歯止めをかける際には、「まずは太陽光から」となりがちですが、こういった状況も考慮した、より実効性のある対応を期待したいと思います。