太陽光発電に蓄電池を後付けする際の注意点 価格や選び方、工事についても徹底解説
この記事では、
- 太陽光発電に蓄電池を後付けするに考えるべきこと
- 後付け蓄電池の選び方
- 後付け蓄電池の相場価格
- 太陽光発電に蓄電池を後付けする際の工事での注意点
について解説します。
この記事を読むと、太陽光発電に後付けで蓄電池を検討する際に注意するポイント、検討の仕方がわかる内容になっています。
ぜひチェックしてみてください。
家庭用蓄電池についてもう少し網羅的な情報が知りたいという方はこちらのページをご覧ください
太陽光発電に蓄電池を後付けする際に一番最初に考えるべきこと
太陽光発電システムと違い、蓄電池はポンとそこに置くだけで済むようなものと勘違いしている方が非常に多いのですが、太陽光発電システムと同じように、蓄電池も「蓄電池システム」呼ぶべきものです。
なぜかというと、その基本的な電気の流れ、仕組みが同じだからです。
そして太陽光発電システムと同様に、蓄電池にも電気を変換するためのパワーコンディショナーが必要です。
後付け蓄電池の場合に一番最初に考えるべきことは、このパワーコンディショナーについてです。
いま既に設置されている太陽光発電システム用のパワーコンディショナーが、あとどのくらい経ったら、あと何年経ったら故障するのか、これが後付け蓄電池の場合に一番最初に考えるべきポイントになります。
太陽光発電のパワーコンディショナーが、しばらくは故障しないと予想する場合
例えば太陽光発電システムを設置してからちょうど10年。メーカーの機器保証もちょうど終わったというタイミングの場合ですが、これまで順調で、今後も数年のうちにパワーコンディショナーが故障するとは予想しにくい場合は、太陽光発電システムをいじくらない方が得策です。
その場合、後付けする蓄電池システムは蓄電池自体が単独で機能できる蓄電池を設置した方がいいので、単機能型蓄電池と呼ばれるものを検討することをオススメします。
単機能型蓄電池とは
単機能型と聞くと、単独の機能しかない劣った蓄電池というようなイメージを抱く方がいらっしゃいますが決してそういう意味合いではなく、太陽光発電システムと別に単独で機能することができるという意味合いです。
同じく単機能型蓄電池は太陽光発電システムで発電した電気を充電できないと誤った記載があるものも見受けられますが、決してそのような事もありません。
蓄電池自体が単機能型という意味合いではなく、パワーコンディショナーが単機能型という意味ですので、太陽光発電システムのパワーコンディショナーを取り外さずに別途、蓄電池用のパワーコンディショナーを取り付けるタイプを単機能型蓄電池と言います。
単機能型蓄電池のメリット
- 価格が安い
- 太陽光発電システムの保証に影響しない
- 停電時の連鎖故障が起きにくい
以下詳しくご説明いたします。
単機能型蓄電池のメリット1.
価格が安い
後付けではなく、これから太陽光発電システムとあわせて蓄電池も設置しようとする方にとっては、パワーコンディショナーが1つで済むハイブリッド型蓄電池の方が割安ですが、すでに太陽光発電システムを設置している方が蓄電池を検討する場合は、単機能型蓄電池の方が現在のところ割安です。
工事代も若干ではありますが、既存のパワーコンディショナーの取り外しなどがない分割安になっています。
単機能型蓄電池のメリット2.
太陽光発電システムの保証に影響しない
太陽光発電システムには、太陽光パネルとパワーコンディショナーなどそれ以外の機器に各メーカーが長期間の保証を付けて販売しています。
既存のパワーコンディショナーを変更するハイブリッド型蓄電池の場合は、既存の太陽光発電システムを変更する話なので、元々ついていた太陽光発電システムのメーカー保証がまだ保証期間内であっても外されてしまいます。
しかし単機能型蓄電池の場合は、あくまで太陽光発電システムと別で単独で機能することが特徴ですので既存の太陽光発電システムに大きく干渉しません。
結果として蓄電池には蓄電池メーカーの保証がつき、太陽光発電には太陽光発電メーカーの保証が残るということになります。
単機能型蓄電池のメリット3.
停電時の連鎖故障が起きにくい
ハイブリッド型蓄電池の場合、太陽光発電システムのパワーコンディショナーを蓄電池と一体型のパワーコンディショナーに交換するため、良くも悪くも太陽光発電と蓄電池がシステムとして一体化します。
単機能型蓄電池よりも複雑化していると言ってもよいと思います。
結果として、不具合が発生した場合に太陽光発電も蓄電池も両方がストップする、両方に悪影響が出るということが起きてしまいます。
単機能型蓄電池の場合は、パワーコンディショナーが太陽光発電と蓄電池が別々に存在するため複雑な変換処理がありません。
また仮にどちらかに不具合が発生しても、別々のシステムのためつられて不具合が発生するという事が起きません。
単機能型蓄電池のデメリット
- 太陽光パワコン故障時のコスト
- 電気変換ロス
- パワーコンディショナーの設置スペース
以下詳しくご説明いたします。
単機能型蓄電池のデメリット1.
太陽光パワコン故障時のコスト
あくまでしばらくは、太陽光発電システムのパワーコンディショナーが故障しないと予想した時に選択するのが、単機能型蓄電池です。
蓄電池用のパワーコンディショナーを新たに設置しますのでこちらについては新しくメーカー保証がついているので心配はありませんが、太陽光発電用のパワーコンディショナーが10年保証などのメーカー保証期間外に故障した場合はその修理・交換費用が発生してしまいます。
パワーコンディショナーの故障は設置後数年でなる方もいれば、20年経っても壊れていない方もいますので本当に何とも言えません。
まだまだ自宅の太陽光発電用のパワーコンディショナーは壊れはしないだろうと単機能型蓄電池にした途端に、故障して費用が別途かかってしまうという事もあり得ない話ではありません。
単機能型蓄電池のデメリット2.
電気変換ロス
パワーコンディショナーで直流電気を交流電気に変換する際に、どうしても多少の電気のロスが発生し、およそ5%ほど少なくなってしまいます。
太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に充電するまでに一度太陽光発電システムのパワーコンディショナーで交流電気に変換し、再度蓄電池のパワーコンディショナーで直流に変換し直すため、電気ロスをするタイミングが2回あることになります。
同様に蓄電池にためた電気を家で使おうとした場合は、
これがハイブリッド型蓄電池の場合は、そのまま太陽光パネルから蓄電池へ直流のまま送ることができるので電気ロスが2回分減ることになります。
単機能型蓄電池のデメリット3.
パワーコンディショナーの設置スペース
単機能型蓄電池は既存の太陽光発電のパワーコンディショナーはそのままに別途蓄電池用のパワーコンディショナーを必要としますので、その分の設置スペースが追加で必要になります。
太陽光発電システムを設置した時を思い出して頂きたいのですが、パワーコンディショナーは上下左右の必要離隔距離が決められていたり、設置箇所にいくつかの制限がありますのでどこでも設置できる訳ではありません。
決して小さい装置ではありませんので、あまり日常生活に邪魔になる場所には設置できないですので頭を悩ます方は多いです。
太陽光発電のパワーコンディショナーが、もうじき故障すると予想する場合
例えば太陽光発電システムを設置してもう15年。
メーカーの機器保証は10年だったのでとっくに過ぎ、ちょうどパワーコンディショナーが故障してしまったので、ついでに蓄電池も検討し始めた方などは、1台のパワーコンディショナーが太陽光発電用と蓄電池を兼務してくれるハイブリッド型蓄電池と呼ばれるものを検討することをオススメします。
故障してしまった方だけでなく、もうじき壊れてしまうのではないかと予想する場合も同様です。
ハイブリッド型蓄電池とは
太陽光発電システムでも既に設置されているパワーコンディショナーを蓄電池用にさらに追加で1台設置するのではなく、いまの太陽光発電システム用のパワーコンディショナーを取り外し、1台で太陽光発電と蓄電池両方の機能を兼ねるハイブリッド型パワーコンディショナーに切り替えて設置するタイプの蓄電池をハイブリッド型蓄電池と言います。
蓄電池がハイブリッド型ではなく、パワーコンディショナーがハイブリッド型ということです。
ハイブリッド型蓄電池のメリット
- 電気変換ロスが少ない
- 機器保証の更新
- 同時設置は割安(後付けには無関係)
以下詳しくご説明いたします。
ハイブリッド型蓄電池のメリット1.
電気変換ロスが少ない
パワーコンディショナーで直流電気を交流電気に変換する際に、どうしても多少の電気のロスが発生し、およそ5%ほど少なくなってしまいます。
ハイブリッド型蓄電池の場合、パワーコンディショナーが1つなのでこの直流電気から交流電気への変換が1回で済むため、電気ロスが少ないとういメリットがあります。
下の図のようにハイブリッド型蓄電池ではなく、太陽光発電システム用と蓄電池用のパワーコンディショナーが1台ずつある場合ですと、太陽光パネルで発電した電気を蓄電池に充電するまでに一度交流電気に変換し、再度蓄電池のパワーコンディショナーで直流に変換し直すとという無駄な動きが発生してしまいます。
これがハイブリッド型蓄電池の場合は、そのまま太陽光パネルから蓄電池へ直流のまま送ることができるので電気ロスが2回分減ることになります。
ハイブリッド型蓄電池のメリット2.
機器保証の更新
太陽光発電システムは現在、太陽光パネルは25年、パワーコンディショナーなどそれ以外の機器は15年の保証が付いているのが標準になってきています。
しかしこの保証年数になったのはここ数年の話で、2010年代の前半までは太陽光パネルもパワーコンディショナーなどそれ以外の機器も保証年数は10年でした。
つまり2010年以前に太陽光発電を設置した方はメーカー保証が切れている状態ですので、今後パワーコンディショナーが故障した場合は有償で修理する必要があります。
ハイブリッド型蓄電池にする場合は、新しいパワーコンディショナーに交換し、新たに蓄電池メーカーの保証が10年~15年付くので安心です。
ハイブリッド型蓄電池のメリット3.
同時設置は割安(後付けには無関係)
これから太陽光発電システムを設置する場合に、同時に蓄電池を導入する方にとってはハイブリッド型蓄電池はかなり割安です。
パワーコンディショナー代が1台分で済むこと、パワーコンディショナーの設置工事代が1回で済むことが理由です。
さらに、各太陽光発電メーカーは蓄電池メーカーと提携し、太陽光発電と蓄電池のセット購入の場合は通常より安くするキャンペーンを行っていますので、より割安となっています。
ハイブリッド型蓄電池のデメリット
- 価格が高い
- メーカー保証の喪失
- 太陽光発電システムとの相性
以下詳しくご説明いたします。
ハイブリッド型蓄電池のデメリット1.
価格が高い
ハイブリッド型蓄電池は、若干ではありますが単機能型蓄電池と比べて現状は値段が高くなっています。
またメリットとして「保証の更新」がありますが、壊れてしまったパワーコンディショナーでない限りまだしばらくは故障をしなかったかもしれないパワーコンディショナーを取り外しますので、その点でもコスト高と言えるかもしれません。
ハイブリッド型蓄電池のデメリット2.
メーカー保証の喪失
太陽光発電システムは太陽光パネルからケーブル、架台、パワーコンディショナーまで一式でメーカー保証が出ています。
太陽光発電メーカーからすれば、その一部分だけ別メーカーのものに変わってしまうのであれば全体の保証はできませんと主張するのは仕方のないことで、実際に10年に満たない場合では保証が外されてしまいます。
シャープ製、東芝製の太陽光パネルは保証期間内に、他メーカーのハイブリッド型蓄電池を付けると、太陽光パネルの保証が喪失してしまいます。
ハイブリッド型蓄電池のデメリット3.
太陽光発電システムとの相性
ハイブリッド型蓄電池はパワーコンディショナーを取り換えてしまうため、設置されている太陽光発電システムの発電量を全部利用できるかどうかパワーコンディショナーの性能、機能との兼ね合いになります。
例えば6枚を1直列につなぎ、同じものが4本存在する計24枚の場合、6直列4並列というシステムになりますが、仮に新しいハイブリッド型蓄電池のパワーコンディショナーが3回路までしか対応していない機種であると、4並列になっているうちの1本が新しいパワーコンディショナーにつなげないことになってしまいます。
現状の太陽光発電システムがどのような回路設計になっているかのチェックが必ず必要です。
太陽光発電に蓄電池を後付けする際に二番目に考えるべきこと
単機能型かハイブリッド型かどちらにするかを決めた後は、どのタイプの蓄電池にするかです。
これまで読んでいただいた方はおわかりだと思いますが、単機能型とハイブリッド型を分けるのは蓄電池ではなくパワーコンディショナーの機能です。
ですので次に考えるべきは、蓄電池の機能です。
蓄電池の機能を考える際に重要なのは、停電時にどのように電気を使いたいかです。
その際に考えるべきは、200V電源を使うか使わないか、特定の電源の利用だけでいいかどうかの2つです。
後付け蓄電池に200V電源利用を求めるかどうか
私たちの生活は、ありとあらゆるものが電気で動いていることを停電すると一気に実感することになります。
真夏の熱帯夜の夜に停電が起きた場合、エアコンが止まって部屋中が暑くなり、照明が落ちて真っ暗になり、冷蔵庫が止まって冷凍食品は溶け出し、スマホの充電もできず、テレビもつかずとなるのですが、蓄電池があればこれらをカバーすることができるのですが、エアコンは200V電源である可能性が高いです。
全てのエアコンが200V電源ではなく、6畳用エアコンなどは100V電源です。
今、市場で販売されている蓄電池の半分以上が200V電源の利用ができません。
エコキュートやIHクッキングヒーターなども200V電源ですので、停電時の利用を詳細に想像し、必要と判断した場合は、200V電源利用可能な後付けできる蓄電池を選ぶ必要があります。
後付け蓄電池に全ての電源のカバーを求めるかどうか
蓄電池のタイプは大きく2タイプに分けられます。
分電盤全てをバックアップする全負荷型蓄電池と、一部の特定の部分(負荷)だけ利用できる特定負荷型蓄電池です。
全負荷型蓄電池は、分電盤全てをバックアップしますので、200V電源ももちろん利用することが可能です。
特定負荷型蓄電池は、事前に特定しておいて分電盤内の負荷(子ブレーカ)のみ停電時に利用することができます。
メーカーによりますが、2つ~5つくらいの特定負荷を事前に設定しておくことができます。
そして特定負荷型蓄電池は、基本的には200V電源には対応していません。(対応できる機種もあり)
これだけ聞けば全負荷型蓄電池が良いと考えると思いますが、当然のことながらここに価格の問題が入ります。
特定負荷型蓄電池 < 特定負荷型蓄電池(200V可能) < 全負荷型蓄電池
この順で価格は高くなっていきます。
そして全負荷型、200V電源可能タイプともに蓄電容量が大きくなる傾向があり、その点でも価格を押し上げます。
後付け蓄電池の工事について
後付けする蓄電池が単機能型の場合は、上にも書いたように追加のパワーコンディショナーの設置場所の確保が設置工事における最大のポイントになります。
ただパワーコンディショナーが蓄電池ユニットと一体化している蓄電池と分離している蓄電池がありますので、一体型の場合はほぼ屋外設置なので隣家とのスペースさへある程度取れていれば問題になることはありません。
後付けする蓄電池がハイブリッド型の場合は、上にも書いた回路設計の相性の確認とあわせて、蓄電池とパワーコンディショナーが分離型だった場合は、既存のパワーコンディショナーの設置場所にそのまま新しいパワーコンディショナーを強度的、設置基準的に設置することが可能なのかどうかの確認が必須となります。
また一体型の場合は、既存のパワーコンディショナーを使わなくなりますのでそのまま放置するのか、外すのか、外したあとの壁面はどうするのかの確認が必要となります。
これ以外にも細々と確認しながら進めなければならないポイントは数多くあり、設置工事に詳しい企業に依頼することが蓄電池の設置においては非常に重要となります。
太陽光発電に後付けする蓄電池の価格
太陽光発電システムを設置済みの方が、後付けする蓄電池で現在一番売れ筋なのは、以下の2つです。
スマートスターL(Smartstar L) | |
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型番 | LL3098HOS/Y |
蓄電容量 | 9.8kWh |
タイプ | 単機能 |
停電時利用 | 全負荷 |
200V電源 | 利用可能 |
相場価格(税込) | 192.9万円 |
クラウド蓄電システム | |
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型番 | JH-WB2021 |
蓄電容量 | 9.5kWh | タイプ | ハイブリッド |
停電時利用 | 全負荷 |
200V電源 | 利用可能 |
相場価格(税込) | 199.2万円 |
単機能型蓄電池で一番売れているのは伊藤忠商事のスマートスターLです。
製造元はエヌエフ回路設計ブロックという会社で、同一商品がネクストエナジーからも出ています。
単機能型なので、提案する側も太陽光発電システムの状況を気にしなくてよい点、全負荷型なので200V電源の利用もでき、9.8kWhと大容量であることなどから不動の1位です。
またシャープのこの蓄電池は、弊社が集計したランキングで2022年、2023年の設置実績で1位を獲得した人気の機種です。
最近の人気機種の傾向は、容量が大きいハイブリッド蓄電池なので、1位から4位までハイブリッドタイプで10kWh前後の容量の機種が軒を連ねています。
後付けできる家庭用蓄電池の価格については、以下のページでさらに詳しく解説しています。
各メーカーごとの相場価格も載せていますので是非ご覧ください。
まとめ
太陽光発電システムに後付けで蓄電池を設置しようとする場合の検討の進め方を書きました。
実際の検討場面では、このようにきれいな流れで検討が進まず、「やっぱりハイブリッド型がいいだろうか?でもそうするとこの価格になってしまうから、やっぱり200V電源利用は諦めようか、だとするとあの蓄電池も検討範囲に入ってくる・・・」など、行ったり来たりするのが通例です。
そうなると実は一番大事なのは、まず既設の太陽光発電システムの回路設計含めてどのような状況であるのかの把握をすることです。
ソーラーパートナーズは、太陽光発電の設置実績は圧倒的に豊富で、かつ以前から蓄電池の設置を多数行っている工事会社のみご紹介しています。
専門のアドバイザーがおりますので、まずはお気軽にご相談ください。