太陽光発電の環境問題について考える 環境アセス法についても解説
こんにちは!
「太陽光発電と蓄電池の見積サイト『ソーラーパートナーズ』」記事編集部です。
太陽光発電は温室効果ガスを排出しない環境に優しいエネルギーとして、世界的に普及が進んできています。
しかし一方で、国内ではメガソーラー開発による森林伐採の影響などから、「むしろ太陽光発電は環境に悪いのでは」という意見も出てきています。
そこで、この記事では太陽光発電が環境に与える影響を良い点と悪い点に分けてわかりやすく解説してみようと思います。
環境アセス法など、太陽光発電の環境問題に関わることは網羅的にまとめてありますので、じっくり読む時間のない方は、目次から気になる項目だけを読んでいただいても大丈夫です。
太陽光発電自体は環境に優しい
太陽光発電は二酸化炭素排出量削減につながる
まずは太陽光発電が環境に与える良い影響から説明します。
後程、太陽光発電が引き起こす環境問題についても紹介しますが、本来太陽光発電は環境に優しいものです。
具体的には、発電の際に二酸化炭素を発生しないという意味で、太陽光発電は地球温暖化防止に役立つクリーンなエネルギー源です。
日本が加盟しているパリ協定でも、地球温暖化防止のために二酸化炭素排出量を削減することが求めれらており、その太陽光発電は二酸化炭素を排出しない重要なエネルギー源と考えられています。
ちなみに、製造時のCO2排出量はわずか
太陽光発電は電気を生み出す段階で温室効果ガス(二酸化炭素)の排出をしませんが、「製造時点で二酸化炭素を排出しているのだから環境に優しくはないのでは?」という批判を受けることがあります。
しかしこの批判は少々的外れだと思います。
太陽光発電のようなエネルギーを製造する装置を作るのに要したエネルギーを、その装置が発電するエネルギーによって何年で回収できるかを示す「エネルギーぺーバックタイム」という指標がありますが、太陽光発電のエネルギーペイバックタイムは1~3年程度です。
それに対して、太陽光発電の寿命はおおよそ20~30年程度と考えられています。
つまり、太陽光発電はその生涯において、製造時に必要としたエネルギーの約10倍のエネルギーを生み出します。
このことから太陽光発電は製造時点で二酸化炭素を排出するから環境に優しくない、という意見はやや乱暴なように感じます。
太陽光発電は地球温暖化防止に役立つということは、紛れもない事実と考えていいでしょう。
「脱原発」でも注目される太陽光発電
このように二酸化炭素排出量削減に大きな貢献を果たすことができる太陽光発電ですが、「脱原発」という意味でも注目されています。
少し難しい話になってしまいますが、2030年度の電源構成の見通しを示す「エネルギーミックス」において、太陽光発電を含む再生可能エネルギーは22~24%、原子力発電は22~20%を占める見込みとなっています。
つまり、再生可能エネルギーの普及度合いが、原発の稼働割合に影響を与えるということです。
特に再エネの主軸である太陽光発電の普及が進むことは脱原発に大きく近づくことを意味します。
太陽光発電が引き起こす環境問題
次に太陽光発電が環境に与える負の側面、太陽光発電が引き起こす環境問題について説明します。
太陽光発電が引き起こす環境問題として問題視されることが多いのが以下のポイントです。
太陽光発電が引き起こす環境問題
- メガソーラー建設による森林伐採
- 急な傾斜地への設置などによる地滑り、土砂崩れ
- パネル廃棄の問題
- 反射光トラブル
いずれの環境問題も、基本的には土地に設置する大規模な太陽光発電を対象としたものです。
ちなみに、住宅用太陽光発電をご検討している方が関係してくるのは「反射光トラブル」以外は関係ありません。
反射光トラブルに関しても、北面設置を避ければまず心配いりません。
環境問題1.
メガソーラー建設による森林伐採
太陽光発電が引き起こす環境問題として代表的なのが、メガソーラーに建設による森林伐採です。
太陽光発電事業者と近隣住民によるトラブルや、反対運動に発展する事例も数多く発生しています。
代表的な例としては山梨県北斗市の事例が挙げられます。
山梨県北斗市は日射量日本一とも謳われる太陽光発電に非常に適した土地であることから、多くの発電事業者が森林などに太陽光発電所を開発しました。
結果として自然豊かな風光明媚な土地に虫食いのように太陽光発電所が乱立することになり、景観を乱してしまっています。またそのほとんどが周辺住民への説明なく開発されたこともあり、大きな問題となりました。
このことは周辺住民の間で大きな問題になり、反対運動も起こっています。
北斗市も「北杜市太陽光等再生可能エネルギー発電設備設置に関する検討委員会」を設立し10kW以上の太陽光発電に対していくつかの制限をかける提言をするに至っています。
森林を切り崩して太陽光発電を設置することは景観を損ねるだけではなく、森林が持つ土砂災害防止機能を失うことにもつながります。
また、工事に伴い水の濁りが発生したり、生態系への影響を及ぼす可能性もあります。
北斗市に限ったことではありませんが、大規模な太陽光発電を設置する事業者は環境への影響が少ない用地を選ぶことが必要です。
また、一定の規模以上の太陽光発電所を建設する際には周辺住民への説明会を開催し、理解を得た上で建設を開始するなど誠意ある対応が求められます。
環境問題2.
急な傾斜地への設置などによる地滑り、土砂崩れ
太陽光発電を設置したことで、地滑りや土砂崩れにつながってしまう事例も発生しています。
地滑りや土砂崩れの主な原因としては、急な傾斜地や地盤が弱い土地に無理やり太陽光発電を設置したことが挙げられます。
では、一部の太陽光発電所を建設する業者や投資家は、なぜわざわざ土砂崩れや地滑りが発生するような危険な土地に太陽光発電所を建てようと考えるのでしょうか。
一番の理由は、土砂崩れが発生しそうな危険な土地は、用途が限られており、非常に安く仕入れることができるからです。
当然ですが、太陽光発電の投資効果を高めるためには「いかに安く土地を仕入れるか」が非常に重要です。
そのため、金儲けを優先する「倫理観が欠如した」業者や投資家は「危険なかわりに安い」これらの土地を好んで購入し、太陽光発電所を建設しているのです。
環境問題3.
パネル廃棄の問題
太陽光パネルの放置・不法投棄といった廃棄にかかわる問題も懸念材料です。
太陽光発電の廃棄の問題が本格化するのは数十年後と考えられますが、適切な廃棄にはコストがかかることもあり、土地に設置した太陽光発電がそのまま放置されたり、不法投棄されたりすることが懸念されています。
このようなパネルの廃棄にかかわる問題を回避するため、国は10kW以上の太陽光発電所に対して廃棄費用の積み立てを義務化する方向で議論を進めています。
ちなみに議論の中では、住宅用太陽光発電などの屋根上に設置される太陽光発電に関しても触れられています。
屋根上に設置する太陽光発電については、建物の撤去と同時に廃棄されることが一般的であり、特段廃棄費用は必要ないものとして扱われています。
環境問題4.
反射光トラブル
太陽光発電が引き起こす環境問題、最後は反射光トラブルです。
反射光トラブルとはパネルにあたって跳ね返った太陽光によって「まぶしい」「暑い」といった近隣トラブルに発展することを指しています。
反射光トラブルは北向きにパネルを設置した場合や、周囲に住宅がある土地に太陽光発電を設置をした場合に発生することがあります。
東西南面の屋根上への設置をした場合には反射光は斜め上方向に跳ね返りますので反射光トラブルが発生することはほぼありえません。
土地に設置をする場合には、北面以外に設置する場合にも周辺環境によっては反射光
トラブルが発生する可能性がありますので、周囲をよく確認した上で設置方位を考えるようにするべきです。
環境アセスメント法について
環境アセスメントとは
環境アセスメントの意味について確認しておきましょう。
環境省の資料には環境アセスメントについて以下のように書かれています。
環境アセスメントとは、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画をつくりあげていこうという制度です。
ややこしいですが、簡単に言うと「事業を行うのなら環境のこともちゃんと配慮して事業計画を立てないとだめですよ」ということです。
一定規模以上のメガソーラーを環境アセス対象にする方針
環境省は「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」において、一定規模以上のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を環境面への配慮を求める環境アセスメント法の対象にする方針を固めています。
太陽光発電が環境アセスメントの対象となることは、大規模ソーラーの開発事業者にとっては設置への障害が一つ増えるという話ですので、歓迎できるものではないかもしれません。
しかし太陽光発電を健全な形で普及させていくためには、太陽光発電が環境アセスの対象となることはむしろ前向きな話です。
設置容量によってアセスの種別が異なる
太陽光発電の規模要件及び地域特性に対する基本的考え方について|環境省
環境省は太陽光発電設備の環境影響の大きさに応じて、環境アセスを以下の3つの枠組みに分ける方針を示しています。
- 法アセス
- 条例アセス
- ガイドラインに基づく自主アセス
その名の通り、「法アセス」は法律による規定、「条例アセス」は地方自治体の条例による規制となります。
「ガイドラインに基づく自主アセス」には強制力はありませんが、環境に配慮して地域との共生を図ることが重要と思われるような場合には、ガイドラインに基づいて自主的な取り組みを促すべきとされています。
環境に配慮しながら太陽光発電を普及させる3つの方法
国土の狭い日本で、周辺環境に十分な配慮をしながら大規模な太陽光発電所を建設しようと思うと、有効な土地が限られてしまうということもまた事実です。
「周辺環境との調和」という制約がある中で、太陽光発電を最大限普及させるにはどうすればいいでしょうか。
ここでは3つの方法を提案してみたいと思います。
- ソーラーシェアリングの活用
- 耕作放棄地の農地転用を許可して太陽光発電所に
- 住宅用太陽光発電の積極的な導入
方法1.
ソーラーシェアリング
土地への設置に関して言えば、最適解と言えるのがソーラーシェアリングです。
ソーラーシェアリングとは、耕作地の地上3メートルほどの位置に藤棚のように架台を設置して、農作物に太陽光があたるように隙間をあけながら太陽光パネルを並べることによって、営農を続けながら太陽光発電を行うことを指します。
太陽光(ソーラー)を発電と農業の両方で分け合う(シェアする)ことからソーラーシェアリングと呼ばれます。
土地を切り開いて太陽光発電を設置するわけではなく、農業を行っている土地をそのまま有効活用するわけですので、環境面への影響はほとんどありません。
さらに農家からすると、通常の農業収入に加えて太陽光発電の収入も得ることができますので農家の後継者問題の解決にもつながります。
食料自給率、エネルギー自給率の両方に課題がある日本にとっては非常に理想的な発電方法です。
方法2.
耕作放棄地の農地転用を許可して太陽光発電所に
2番目に挙げるのは耕作放棄地の農地転用を許可して太陽光発電所にするということです。
もちろん、耕作放棄地であっても、周辺環境に配慮する必要はありますが、山林などをわざわざ切り開くのではなく、使われずに余っている土地を有効活用することができます。
最初に紹介したソーラーシェアリングを除いて、農地に太陽光発電を設置することは禁止されており、太陽光発電を設置する場合には土地の種目を雑種地などに変更する、いわゆる「農地転用」の手続きをする必要があります。
ただ、農地転用はどんな土地でも可能というわけではなく、たとえ耕作放棄地であっても農地転用ができず、太陽光発電を設置することができないというケースが多数あります。
これは農林水産省の「農地は農業に活用することで食料自給率を高めたい」という考えがあるのが理由です。
しかし耕作放棄地であれば実際には農業は行われないわけですので、土地を太陽光発電に活用しても食料自給率の低下にはつながりません。
太陽光発電用地としての利用を解禁することで食料自給率と同様に非常に低い水準にあるエネルギー自給率の向上に役立ててもいいのではないかと思います。
この点については、現在農業を営んでいる方との公平性の問題などがありますが、是非国に前向きな検討をしていただきたいものです。
方法3.
住宅用太陽光発電の積極的な導入
環境破壊や周辺住民に迷惑をかけることなく太陽光発電を普及させる最もシンプルな方法は、太陽光発電を住宅に設置することです。
反射光の問題など、住宅用だからと言って周辺環境に全く配慮しなくていいわけではありませんが、住宅の屋根上であれば、土砂崩れにつながることもなければ、用地を確保するために伐採をする必要もありません。
また、太陽光発電を住宅に設置すると、災害時に電気が使えるので防災の意味でも役に立つというメリットがあります。
もちろん、設置した方に経済メリットがあることは言うまでもありません。
住宅用太陽光発電は、環境に優しく、災害時の備えにもなり、経済的にもお得な理想的なエネルギーです。
まとめ
太陽光発電は本来的には環境にやさしく、エネルギー自給率を向上させることにつながり、更には停電時にも電気を使うことができるという非常にメリットの多い電源です。
太陽光発電による環境問題を指摘している有識者の方々も、これら太陽光発電のメリットについては十分認めています。
しかし、太陽光発電にどれだけメリットが多いからといって、周辺環境に配慮せずに設置していいということにはなりません。
今後、太陽光発電が真に自立的な主力電源となるためには、コストダウンなど経済性の追求だけでなく、「地域との調和」を目指す必要があります。
ソーラーパートナーズでは日本で唯一の太陽光発電の工事会社ネットワークを運営しています。
これから太陽光発電の設置をご検討している方には地域の環境に精通した、地元の業者をご紹介することができますのでご希望の方は是非お気軽にご依頼ください。