AI活用で蓄電池を自動制御 伊藤忠、東電HDが手がける電力小売り新サービス「あいでんき」
蓄電池をAI制御する料金プラン あいでんき
経済産業省が2019年問題対策サイトを立ち上げ、いよいよ電力小売事業者や蓄電池メーカーによる、「FIT切れユーザー」向けのサービス提供が本格化してきました。
そんな中、伊藤忠商事、東電HD傘下の電力小売会社TRENDE、英国モイクサ社、エヌエフ回路設計ブロック4社連携で、AIを活用して蓄電池の制御を行うことを前提とした新たな電気料金プラン、「あいでんき」を発表しました。
次世代蓄電システム専用の電気料金プラン「あいでんき」をリリース|TRENDE
約56万件の固定買取期間が終了する2019年問題を控える今、新たな選択肢といえるこのサービスがどのような内容なのか解説します。
AI制御で深夜電力と太陽光発電を賢く蓄電できる
「あいでんき」の料金プランは「深夜が安く、日中が割高」な料金プランです。
その料金プランとモイクサ社が提供する「GridShare」のAIで蓄電池の制御を行うサービスを組み合わせることで月平均でおおよそ1,500円程度の電気代削減が可能とされています。
翌日の天気が晴れなら太陽光、雨なら深夜電力から蓄電
AI(人工知能)で蓄電池の充電・放電を最適化。|グリッドシェアジャパン
「GridShare」では、太陽光発電でつくった電気と、割安な深夜電力のどちらを蓄電池に貯めるかを天気予報データを活用することで、自動で判断します。
例えば、翌日の天気予報が晴れの時は、日中の太陽光発電の電気を蓄電すればいいので深夜電力の蓄電は少なめにしておきます。
逆に、翌日の天気予報が雨の時は太陽光発電の発電が足りなくなるので、深夜に電力会社から送られてくる電気を蓄電しておきます。
AIがライフスタイルを分析して電気使用量を予測
蓄電池に貯める電気の量は、利用者の毎日の生活における電気使用量やライフスタイルを基にAIが自動で予測します。
そのため、「貯めていた電気が足りずに日中の割高な電気を買わなくてはいけない」ということが起こりにくくなっています。
「あいでんき」の注意点
そんな先進的で魅力ある「あいでんき」のサービスですが、ご契約する上ではいくつかの注意点もあります。
注意点1. AI制御に月額料金が必要
「あいでんき」の料金プランを利用するためには、蓄電池のAI制御を行う「GridShare」の契約が必須です。
「GridShare」には月額1200円の利用料が発生します。
注意点2. 蓄電池の機種が限定される
「GridShare」はすべての機種の蓄電池に対応しているわけではありません。
対応機種は伊藤忠商事の「SmartStarL」
に限定されます。
「SmartStarL」は定格容量9.8kWhと、一般的な家庭用蓄電池の中ではかなり大容量です。
しかし容量が大きい分、希望小売価格が285万円(税別、工事費別)と高額な点がネックになります。
SmartStarLの特徴 全負荷型で200Vも対応
「SmartStarL」は大容量なだけではなく、「全負荷型」という特徴もあります。
一般的な家庭用蓄電池は特定負荷型と呼ばれる、停電時に電気を使える部屋や家電が限定されるタイプのものがほとんどですが、全負荷型の「SmartStarL」の場合には全ての部屋、家電を使うことが可能です。
また、エアコンやIHクッキングヒーターなどの200V機器も使用することができます。
電気料金プランの詳細は「GridShare」契約者だけに公開
当然ですが、電気料金プランを選ぶ際には、現在契約している電気料金プランと比較する必要があります。
しかし、残念ながら「あいでんき」の電気料金プランの具体的な金額は「GridShare」契約者だけにしか案内していないとのことでした。
電気料金プランがわからずに月額使用料が発生する「GridShare」を契約するのは、なかなか勇気がいることですので、
今後の公表に期待したいと思います。
あいでんきは「安心」を重視する方におすすめ
経済効果重視なら他の選択肢を
経済効果を最重要視するのであれば、少なくとも現時点では「あいでんき」を利用することはお勧めできません。
何故なら、先ほどもご案内したように、「あいでんき」の契約に必要な家庭用蓄電池「SmartStarL」は停電時の安心に特化した製品であり、経済効果を重視した製品ではないからです。
蓄電池のAI制御に月額使用料が発生することもあり、現状では非公開の電気料金プランが「蓋を開けてみたら常軌を逸して格安だった」という場合を除けば、「あいでんき」の利用を諦めて小型の家庭用蓄電池を導入した方が経済的にお得になることはほぼ間違いありません。
「停電対策を万全にしたい」という方にマッチするサービス
しかし、「経済効果よりも停電時にも電気が使える万全の体制を整えておきたい」という場合には安心面に特化した「SmartStarL」と、SmartStarLを最適に運用する「あいでんき」のサービスはおすすめです。
固定価格買取期間の終了を機に、「これからは経済効果よりも安心に目を向けたい」という方は「SmartStarL」の導入と、「あいでんき」のご契約も検討してみてはどうでしょうか
将来的にはVPPやP2P電力取引も視野に入れる
「GridShare」により、家庭の電力の需給調整やデータ管理がよりスマートな形になることで、将来的には「P2P電力取引」や「VPP事業」への応用も予定されています。
「P2P電力取引」とは、大手電力事業者などを介在させずに、個人間で電力の取引を行うしくみのことです。
「VPP事業」とは、太陽光発電や風力発電、燃料電池、蓄電池などの比較的小さなエネルギー源をいくつもとりまとめて、まるで一つの発電所のように制御する仮想の発電所のことをいいます。
このような仕組みをうまく活用できるようになるのとあわせて、蓄電池の導入費用の低下が進めば、将来的に「あいでんき」は蓄電池の導入費用以上の経済効果が期待できるサービスになる可能性があるでしょう。
最後に 2019年問題対策には様々な選択肢がある
2019年問題対策には家庭用蓄電池を導入する以外にも、電気自動車に貯めた電気をご家庭で使えるV2Hや、太陽光発電でつくった電気でお湯を沸かせるエコキュートを導入するといった選択肢もあります。
また、今回「あいでんき」のサービスが発表されたように、2019年問題が近づくにつれて様々な電力小売事業者が、様々なサービスを発表してくることが予想されます。
ソーラーパートナーズでは電力小売事業者各社から買取プランが発表され次第、随時当ホームページでご紹介をしていく予定です。
また、「2019年問題対策をどうすればいいかわからない」とお悩みの方のご相談にも対応しておりますので、お困りの方はお気軽にご依頼ください。