九州電力が太陽光発電の出力制御を実施 今後の見通しと住宅用への影響は
離島以外では全国初 九州で出力制御が実施された
10月13日(土)、14日(日)、20日(土)に離島を除くと全国で初めて、九州電力管内で太陽光発電の出力制御が実施され、
新聞を始めとした各種報道機関がこぞってネガティブな論調でこの話題をとりあげました。
そのため、住宅用太陽光発電の導入を検討している多くの方から、「本当に導入して問題ないのだろうか」と不安の声が聞こえてきました。
しかし、よく情報を読み込めば、当面住宅用については全く出力制御の心配はする必要がないことがわかります。
ここで詳しく解説します。
出力制御とは電気を流さずに需給バランスをとること
再生可能エネルギー特別措置法施工規則の一部を改正する省令と関連告示を公布しました(p.7)|経済産業省資源エネルギー庁
出力制御によって電気が余らないようにする
まず「出力制御」という言葉の意味から確認しておきましょう。
「出力制御」とは、電気の供給量が需要を上回るリスクがあるときに太陽光発電などの発電設備が系統に電気を流すことをストップして、需給バランスをとることを指します。
「出力抑制」と呼ばれることもありますが、どちらもほとんど同じ意味です。
(厳密には「出力制御」は制御する側の電力会社の立場、「出力抑制」は抑制される側の発電事業者の立場の言葉であるという違いがあります。)
電気は足りなくても、作りすぎてもダメ
では、なぜ出力制御によって電気の受給バランスをとる必要があるのでしょうか。
それは電気は足りないのはもちろん、作りすぎても停電につながってしまうというリスクがあるからです。
このことを「同時同量の原則」と言います。
今後ニュースなどで「同時同量」というキーワードを聞くことがあるかもしれませんので是非覚えておいてください。
出力制御が発生しやすいのは春·秋季の土日祝
春·秋季の土日は電力消費量が下がる
今回、九州で出力制御が発生したのが10月だったように、出力制御が発生しやすいのは春·秋季の土日です。
なぜ春·秋季に出力制御が発生しやすいかというと、春·秋季は冷暖房を使用することが少なく電力消費量が下がるからです。
更に土日には日中の電気使用量が多い工場やオフィスがお休みのことが多いので、法人での電力消費量も下がります。
春·秋季は天気が良く太陽光発電の発電量も増える
また、春·秋季は天候が良く、太陽光の発電量が増えやすい季節です。
つまり、春·秋季の土日は電気使用量が少ないだけでなく、太陽光の発電量が増えやすいため、電気が余ってしまう可能性が高くなります。
そのため、今回九州で発生したような出力制御が起きやすいのです。
九州で出力制御が発生したのは太陽光発電が爆発的に普及したことが理由
次に、なぜ離島を除いて初めて出力制御が発生したのが九州エリアだったかを説明します。
結論からいうと、九州で最初に出力制御が実施された理由は、九州が全国の中でも特に太陽光発電の普及が進んだエリアだからです。
九州は「一割市場」とも言われているように、総人口、総電力需要のいずれも全国比のおおよそ10%程度です。
それに対して、太陽光発電の導入量はというと、平成28年度12月までの累計導入量で全国約3,761万kWに対して九州は685万kW、割合でいうと全体の18.2%となります。
九州ではこれだけ太陽光発電が積極的に導入されたため、太陽光発電でつくった電気が余り、出力制御が発生したのです。
九州の出力制御 初回は10kW以上の発電所の17%が対象だった
10月13日(土)と14日(日)の出力制御指示を出した発電所の数についてはすでに九州電力が公表していますが、
いずれの日も10kW以上の太陽光発電所21,119件中3,655件と、全体の17%に出力制御の指示がだされたことがわかります。
ちなみに、10月13日(土)と14日(日)では、それぞれ異なる発電所が出力制御指示の対象となっていました。
これは公平性を保つ観点から出力制御の指示の対象については、輪番制で実施されるように決められているからです。
出力制御の影響を受ける日数上限は連系した時期によって異なる
九州電力管内において、出力制御の影響を受ける日数の上限は対象の設備が「旧ルール対象」なのか、「指定ルール対象」なのかによって異なります。
どのように異なるかは以下の表のとおりです。
旧ルール対象事業者※1 | 指定ルール対象事業者※2 | |
---|---|---|
特別高圧 高圧500kW以上 |
出力制御対象 (年間30日まで無制限・無補償) |
出力制御対象 (無制限・無補償) |
高圧500kW未満 低圧10kW以上 |
出力制御対象外 | |
低圧10kW未満 | 出力制御対象外 |
出力制御対象 (無制限・無補償だが当面は対象外) |
※1旧ルール:平成27年1月25日までに九州電力が連系承諾した設備
※2指定ルール:平成27年1月26日以降(低圧10kW未満は平成27年4月1日以降)に九州電力が連系承諾した設備
10kW未満は出力制御の心配は不要
当面10kW未満は出力制御対象外と九電が明記
平成27年4月1日以降申込の10kW未満の太陽光発電も指定ルールの対象になると書かれていると、
「自宅の屋根に設置した太陽光発電も出力制御の対象になるのでは」と不安にならないでしょうか。
しかし、住宅用10kW未満の太陽光発電であれば心配する必要はありません。
当面は10kW未満の太陽光発電は出力制御の対象からはずれる旨が九州電力の資料に記載されている上、
経済産業省の資料にも以下のような記載があります。
10kW未満(主に住宅用)太陽光発電の取り扱いについて
太陽光発電の出力制御については、まず10kW以上の制御をおこなった上で、それでもなお必要な場合において、10kW未満の案件に対して出力制御を行うものとする。
万が一10kW未満にまで及んでも自家消費分は影響なし
また、別の資料では10kW未満も出力制御をせざるを得ない事態になった場合について、以下のように記載されています。
住宅用太陽光発電等の小規模太陽光発電(500kW未満)や小規模風力発電(20kW未満)に関する出力制御の適用時期の後ろ倒し
…10kW未満(主に住宅用)の案件に対して出力制御を行わざるを得ない事態が生じた場合においても、余剰売電を前提としている10kW未満(主に住宅用)については、自家消費分を超えて発電される余剰分を出力制御の対象とする方向で技術的な検討を行います。
再生可能エネルギー特別措置法施行規則の一部を改正する省令と関連告示を公布しました(現在web上からは削除)|経済産業省資源エネルギー庁
つまり、万が一出力制御が10kW未満にまで及ぶことになったとしても、自家消費分には一切影響がでないということです。
現在、住宅用太陽光発電については蓄電池をセットで導入することがスタンダードになってきていたり、太陽光発電の電気でお湯を沸かせるエコキュートが発売されるなど、太陽光発電は徐々に自家消費型にシフトしてきています。
10kW未満の太陽光発電が出力制御の対象となるのはまだまだ先の話ではありますが、すでに住宅に太陽光発電を設置している方も、蓄電池やエコキュートについて調べてみるなど、自家消費型に移行する準備を進めておくと、より一層安心です。
ただし、住宅用でも10kW以上は出力制御対象となるので注意
ただし、一点注意が必要なのは住宅用であったとしても10kW以上の場合には出力制御の対象となることです。
今現在、10kW前後の太陽光発電の導入を考えている方は、出力制御の影響まで加味して容量を決定したほうがいいでしょう。
関門連系線の増強で出力制御の機会は減る
九州と本州中国地方を結ぶ関門連系線という地域間連系線があります。
地域間連系線についての詳しい説明はここでは省きますが、簡単に言うと九州で電気が余ったときに中国地方に電気を送れる量を増やすということです。
現在、関門連系線を通せる再エネ電気の量を増やす計画が進められており、既に以前の約2倍、2018年度末には3倍程度に拡大する予定です。
九州で電気が余った分を中国地方に送ることができれば、出力制御をする必要が少なくなります。
最後に 出力制御はネガティブな話ではない
出力制御のニュースが報道されると、「太陽光発電事に対して、国が梯子をはずした」と安易にとらえる方が少なからずいますが、もちろんそんなことはありません。
理由は以下の2点です。
出力制御をネガティブにとらえる必要がない理由
- 出力制御を行う可能性があることは予め告知されており、実施されることはわかっていた。
- 太陽光発電や風力発電は自然条件に左右されやすく発電量の変動が大きい電源だが、万が一発電しすぎた場合には出力制御をおこなうことができるという安全弁があるおかげで、安心して電力網への接続量を増やすことができる。
2018年7月に閣議決定した「第5次エネルギー基本計画」でも、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーを主力電源化すると書かれているように、今後も国が太陽光発電はじめ再エネの普及に力を注ぐことは確実です。
新聞やニュースの見出しだけを見て大騒ぎするのではなく、冷静に判断すれば出力制御が怖いものではないことがわかると思います。
それでも不安を払拭できない、という方はお気軽にソーラーパートナーズまでご相談ください。