ブランドよりも本質 業界が認めるQセルズ
日本市場で急速にシェアを拡大するQセルズ
中村:
本日はよろしくお願い致します。
東氏:
こちらこそよろしくお願い致します。
中村:
早速質問させていただきます。
2009年に急激に拡大した日本の太陽光発電市場では国内メーカーが圧倒的に強く、海外メーカーは苦戦が続いていました。
特に住宅用市場においては、サンテックパワーとカナディアン・ソーラー以外のメーカーはどこも泣かず飛ばずという状況でした。
パネルの価格の安さだけで勝負ができる産業用と違い、住宅用太陽光発電市場ではパネルだけでなくパワコンや架台などシステム全般の提供が求められることや、細かい流通網を整備する困難さ、そして何より日本人の国内メーカー信仰の強さが高いハードルになったのかと考えられます。
そのような市場環境の中、日本市場に参入したのが2013年と後発の御社が、わずか5年でこれほどの存在感を放っていることには非常に驚かされます。
何がこの急成長の要因だとお考えでしょうか。
東氏:
Qセルズが日本の住宅用太陽光発電市場でここまでシェアを伸ばすことができた理由は主に2つあります。
1つは他の海外メーカーと比べても、当社には業界からの強い認知度があったということ、2つ目は参入のタイミングが良かったことです。
日本市場参入前から誰もが知っていたQセルズ
東氏:まずは業界からの認知度があったということからですが、当社が日本市場に参入したとき、既に業界でQセルズの名前を知らない方はいませんでした。
2007年、2008年には2年連続出荷量世界一になったこともあり、世界中で「Qセルズ」の名前は知れ渡っていました。
日本においても、販売店や工事会社、商社などの商流から「世界一のドイツのQセルズ」として非常に好意的に受け入れていただけたので、とても順調なスタートを切ることができました。
中村:確かに御社が日本市場に参入する前から、業界人でQセルズの名前を知らない人はまずいませんでした。
出荷量世界一だったというのもそうですが、太陽光発電先進国のドイツを代表するメーカーとして非常に注目されていましたね。
消費者向けのブランディングよりも「本質」を重視
中村:
また、業界内の認知度もそうですが、最近ではトリンドル玲奈さんを起用したテレビCMやブランドカラーを統一した販促物の展開など、消費者向けのブランディングも非常に魅力的に感じます。
ブランド戦略は相当意識されているのではないですか。
東氏:
まったく意識していないとは言いませんが、消費者向けのブランド戦略が最も重要なものだとは考えていません。
むしろ個人的には、太陽光発電は消費者向けのブランド戦略などまったく無くても展開できる市場だと思っています。
なぜなら太陽光発電は高額商品ですし生活必需品というわけでもないので、いくらブランディングを徹底しても、漠然としたブランドイメージだけで購入を決断してもらうことはできないからです。
お客様に製品を購入、設置していただくためには「なんとなく」の良いブランドイメージを持ってもらうことよりも、実績や性能、耐久性などの、もっと本質的な部分でお客様にメリットを感じていただくことが重要です。
つまり表面的なブランド戦略がなくても、実績や性能、耐久性などの本質があれば、十分市場で争っていくことはできるということです。
中村:
非常に納得できます。いくら宣伝がうまくても事実が伴わなければ意味がないですからね。
市場が安価で高品質なパネルを求めていた
東氏:
弊社が日本市場でこれだけのシェアを確保できた二つ目の理由は、参入のタイミングが良かったということですね。
中村:
産業用バブルが始まりだしたタイミングという事でしょうか?
東氏:
いや、それはあまり関係ないですね。
あの産業用バブルで市場が盛り上がったのは確かにありがたかったですが、それは国内海外問わず全メーカーが同じ条件です。
そのためシェア争いという意味ではさほど影響はありません。
中村:
住宅用太陽光発電に関して言うと、御社が参入した2013年度はちょうど国の補助金が終了したタイミングですよね。
「タイミングが良かった」というのはどういうことでしょうか。
東氏:
普通に考えれば国の補助金がなくなったというのはあまり良いタイミングとは思えないですよね。ただ、これは逆に言えば市場がコストパフォーマンスに優れたメーカーをちょうど求めていたタイミングだったということです。
高性能でかつ低価格という特徴がある弊社からすると非常に参入しやすいタイミングでしたね。
Qセルズの登場はまさに渡りに船
東氏:
太陽光発電を普及させていく上で、国の方針は「固定価格買取制度と補助金の2つを導入支援の柱として普及を促進し、最終的にはこの2つの後押しがなくても市場で受け入れられる価格までコストを下げる」というものですよね。
弊社が参入した2013年に補助金がなくなったということは、つまり既にコストがかなり下がっていたということです。
コストダウンが進んだということは太陽光発電を普及させるという観点で考えればとても良いことですが、販売店からすると諸手を挙げて喜べるものではありません。
例えば、以前には300万円で販売していた太陽光発電システムを200万円で販売するようになったとします。
仮に粗利益の設定が販売金額の10%だとすると、以前は1件で30万円だった粗利益が20万円になってしまうということですから、販売店からすると苦しい状況です。
中村:
コストダウンが進むと販売店も苦しいですがメーカーも苦しいですよね。
東氏:
私は補助金がなくなった当時、国内メーカーにいましたが補助金がなくなるのは「勘弁してくれよ」と思いましたよ。
(東氏は有名国内メーカー出身)
ただ、メーカーがなかなかコストダウンできない中、お客様から直接値下げを要求される販売店は板挟みでもっと大変だったと思います。
そのように販売店が市場価格の低下に苦しんでいたタイミングだったので、高性能なだけではなく低価格も実現できていたQセルズの参入を、販売店には非常に喜んでいただけましたね。