「最新技術『PERC』を日本企業は作れない」カナディアン・ソーラー研究開発の原資
日本メーカーに追いついた技術力
中村
先日、新住宅パッケージ「PLATINUM」を発表されました。
こちらについては後ほど詳細をお伺いしたいと思うのですが、一昨年から展開されている住宅用パッケージ、「QUORCA」もその太陽光パネルの変換効率は18.48%と業界トップクラスです。
弊社も2010年から事業を行っておりますのでよく覚えているのですが、最初の2010年の御社のパネルは180Wで変換効率14.08%でした。
変換効率だけが重要指標ではないですが、この伸長率は驚異的です。
非常に残念なことですが、国内メーカーでここまでの伸びを見せたところはありません。
この技術力について次はお伺いしたいと思います。
山本社長
うーん。たしかに残念なことです。
これは、少し言いにくいところもあるのですが…
中村
是非お願いします。
山本社長
これは一般的な日本の製造業の構造的な問題が、この太陽光の業界でも避けられなかったという事だと思います。
最初に起きたのが半導体メモリであり、液晶パネルであり、携帯、PCとどこもかつては日本には製造していたメーカーがたくさんありました。
でも液晶などは、ジャパンディスプレイ1社になってしまった。
草創期はモノづくりだといって、そこの投資はかなりかける。初期はいいんです。
そこから量産期に移行し、コモディティフェーズに入ってくるとその時点で急激に日本の強さが発揮できなくなると。
太陽光もその始まりの時から、2008年くらいまで非常に長い間日本がダントツトップだったのに、ヨーロッパのFITを境に海外勢、特に、中国勢にやられてしまった。
年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 |
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2016 | ジンコ | トリナ | カナディアン・ソーラー | ハンファQセルズ | JA |
2015 | トリナ | カナディアン・ソーラー | JA | インリー | ジンコ |
2014 | トリナ | インリー | カナディアン・ソーラー | ジンコ | JA |
2013 | インリー | トリナ | カナディアン・ソーラー | シャープ | ジンコ |
2012 | インリー | ファースト | トリナ | カナディアン・ソーラー | サンテック |
2011 | サンテック | インリー | トリナ | ファースト | カナディアン・ソーラー |
2010 | サンテック | ファースト | シャープ | インリー | トリナ |
2009 | ファースト | サンテック | シャープ | インリー | トリナ |
2008 | Qセルズ | シャープ | ファースト | インリー | サンパワー |
2007 | シャープ | Qセルズ | サンテック | 京セラ | ファースト |
2006 | シャープ | Qセルズ | 京セラ | サンテック | 三洋電機 |
2009-2016 IHS Research
2006-2008 SPV Market Research
収益性が低くなると研究開発費を確保できなくなる
山本社長
技術力についてのご質問でしたが、まず技術の前に、市場が求める価格で提供できていたのかと。
日本という市場は独特で、日本企業のブランドや信頼性というものがあるためか、太陽光の普及が加速される中でも熾烈な価格の叩き合いというものが少なかったのです。
反面、海外においては、急激な市場の広がりと同時に価格競争も激烈になり、その中で日本は徐々に取り残され、最終的には全く太刀打ちできない状況に陥った。
その時に、世界の価格競争に立ち向かうべく、そしていつか日本にも押し寄せてくる価格競争で迎え撃つべく、価格を下げるために海外に拠点を移すという決断ができなかった。
つまり、太陽光パネルでも日本の製造をあきらめきれなかった、ということだと思います。
結局、そこで価格競争が厳しくなる市場においては、収益力が一気に弱くなってしまった。
そして、収益が悪化すると、十分な研究開発費を確保できず、技術革新のスピードも落ちていく。そういう負の連鎖にはまってしまう。
その研究開発の差がここにきて、明確に技術力の差となってきてしまっているといわざるをえません。
最先端の技術『PERC』は日本企業では作れない
中村
内容が専門的になり過ぎると読者の方がついていけなくなってしまいますので、あまり専門用語を使いたくないのですが、世界の主流は完全に単結晶のPERCに移っています。
国内メーカーは住宅用トップのパナソニックがHIT(ヘテロ接合型)、東芝とシャープはIBC(バックコンタクト)と独自路線という感じがするのですが、どのように感じていらっしゃいますか?
山本社長
この部分がまさに、世界と日本の差が如実に出てしまっている一例です。
世界では、もう単結晶PERCが、2018年度から完全に主力になると言われています。
実際、弊社のパネルも住宅用は全てPERCです。
セルPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)新技術
従来の太陽光パネルは、パネルが浴びた太陽光をそのまま電気に変換していました。
PERC技術を取り入れることによって、パッシベーション膜というのが作られ、取り入れた太陽光をパッシベーション膜に反射させて、さらに発電量を増やすことが可能となりました。
この世界の最先端のPERCを、日本のメーカーで作れるところが今現在1社もないのです。
やはり、設備投資を含めて、技術革新に向けての動きで、少し世界の流れに乗り遅れてしまったという感じは否めないと思います。
かつては、30年以上の長きにわたり、世界の太陽光発電の技術をリードしてきた日本として残念な限りです。
液晶もかつては日本の世界のトップで、かつては日本で50社ぐらいあったのが1社。
そういう風にならないように願っていますが、非常に厳しい状況であるのは間違いありません。
太陽光発電でも進んでしまった『ガラパゴス化』
中村
携帯電話もガラパゴス携帯と呼ばれ、日本独自の進化を遂げたばかりに、世界市場から取り残されてしまいました。
太陽光発電も日本の複雑な屋根形状、材質へのカスタマイズに注力し過ぎたばかりに、根本の性能で遅れてしまったのかなと感じます。
もはや安かろう、悪かろうという過去のイメージは完全に切り替えなければならないと痛感します。
今の今まで思っていたのですが、海外メーカーは世界の市場が相手ですのでとにかくコストを下げることが優先で、新商品を出すということは二の次。とにかく品質は多少犠牲にしてでも安くするというのがビジネス上の重要指標なのかと思っていましたが、どうも認識が間違っていたようです。
山本社長
それはもう完全に違いますね。
もちろんたくさん製造して、量産効果でコストを下げるということはずっとやってきたことですし、やらなければならないことですが。
品質面を犠牲にするという事は、これは自分で自分の首を絞めることと同じですので。
単年度で売り上げをあげても、何年かして品質問題で巨額のお金を使ってしまえば同じことです。
クオリティを犠牲にすることはありえません。
経営としてありえない。