【2019年1月28日追記あり】アスクル倉庫火災と太陽光発電パネルの関係
【2019年1月28日追記】
2019年1月28日、消費者庁はウェブサイト上において「消費者安全調査委員会 調査報告書『住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等』」を公開しました。
今後、この報告書が公開されたことをきっかけに、報道などで、太陽光発電の火災リスクが取り上げられることが増えると予想されます。
しかし、今回の報告書は「太陽光発電全般について警鐘を鳴らす」というものではありません。
「ごく少数の一部の太陽光発電の設置形態を見直してはどうか」という内容です。
また、問題となっている設置形態の太陽光発電モジュールについても、該当するのは、ごく一部の限られた時期に製造された製品に偏っていますので、全ての製品に火災リスクがあるというわけではありません。
これから太陽光発電を設置する人は全く心配する必要はありません。
以下の記事で詳しく解説しています。
アスクル倉庫火災の鎮火が遅れたのは、太陽光発電のせい?
アスクル倉庫の火災がなかなか鎮火されず連日メディアを賑わせています。
普段弊社もアスクルさんを利用させて頂いてますので、今回の火災は段ボールもあり、そもそも商材で紙が多いだろうから鎮火は大変だろうなと他人事のように思っておりました。
ですが、鎮火が遅れているのは太陽光発電のせいだという声が聞こえてきました。
今回、消防本部は鎮火が遅れている理由として3点挙げていました。
1. 倉庫内に燃焼しやすい商品が多いこと
2. 建物面積が大きいこと
3. 建物の2階と3階に窓がほとんどなく放水が難しいこと
窓がないと消火にどう影響するのかというと、放水が行えないために倉庫内の室温が500度にも上ってしまいます。
なので、倉庫内の消火活動が行えないと報道されました。
開口部が少ない原因としては、太陽光発電が設置されている事が関係していると思います。
太陽光発電による感電の恐れ
太陽光発電が設置されている建物には、元の開口部が少ないので、消火のための開口部を作る必要があります。
ですが、開口部を作る際に屋上に設置されている太陽光パネルが邪魔をしていると思われます。
太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策|消防研究センター
太陽光パネルで発電した電気は、屋外か屋内のケーブルを通って接続箱まで運ばれます。
消火活動中は当然、水浸し状態になります。
火災によって断線している場合は、放水された水を伝って感電する恐れがあります。
仮に接続箱でスイッチを切ったとしても、切った後に電気が流れなくなるだけで、スイッチを切る前までに流れていた電気はまだ送られています。
また途中で断線していても、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けます。
たとえ表面の強化ガラスが損壊しても、パネル自体が多少損壊していても、発電は続いていますので、水に触れないよう注意を払う必要があります。
消防庁の「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」
消防庁も「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」という総ページ158ページにもわたる資料をまとめています。
資料の中で、消防車から一斉に棒状の放水を行うと放水された水を伝わって感電する恐れがあるため、棒状注水を行う場合には6メートル以上の十分な距離をとり、基本的には噴霧注水をするように指導しています。
感電自体が、それほど人体に大きな影響を与えないレベルのものだとしても、感電による二次災害の方が危険です。
弊社の施工チーム主任も感電経験がありますが、いきなりバンと体を揺さぶられるような感覚と言っておりました。
ですので、感電によるショックで梯子など高所からの滑落が考えられる一番のリスクであると思われます。
太陽光発電が設置されている建物での消化活動時の対策
1.感電対策には、手袋や長靴は乾燥しているか、絶縁性の高いもの
太陽光発電が設置されている建物で、家屋の火災鎮火の際は乾燥しているものや濡れても絶縁性の低下しない絶縁性の高い装備(手袋や長靴)を使用することが大事になります。
2.ガラス対策には、ゴーグルなどの防具
また太陽光パネルは、強化ガラスが使用されており、通常は破壊時も粉々に砕けます。
ですが、産業技術総合の太陽光発電研究センターの実験では、あまりの高温にさらされると普通のガラス状態に戻ってしまう事があるということが確認されています。
強化ガラスが破損すると破片が粉々になるのですが、普通のガラスに戻ってしまうと、大きく鋭利な破片となってしまうので大変危険です。
万が一の時に備えて、ゴーグルなどの防具を着用することも必要です。
3.光対策には、ブルーシート
そして、太陽光パネルは取り外してケーブルが繋がっていなかったとしても光が当たれば発電します。
なので、可燃物のそばには放置しないこと、厚手のブルーシートをかぶせておくなど光が当たらないような処置をしておくことが大事です。
まとめ
太陽光発電を設置している建物での火災対策は、
- パネルが壊れても電気は通っているため、消火活動の水で感電の恐れがある
- 乾燥しているものや濡れても絶縁性が低下しない手袋や長靴を使用する
- 太陽光パネルは、可燃物のそばに放置しない
- 光が当たらないよう、パネルの上にブルーシートをかぶせておく
太陽光発電は、屋根、屋上に設置するものですので、ついつい屋根工事のリスクにばかり目がいきがちです。
パネル設置工事には免許がなく、電気工事には免許が必要である事からも、電気工事部分の重要性、そのリスクを強く認識しておかなければなりません。
これからの住宅には、ZEHの普及とともに原則として太陽光発電が設置されていく時代になっていきます。
今回は火災時のリスクの話ですが、そもそも火災発生のリスクも電気を扱う以上他の電化製品と同様に含んでおりますので、そちらについてはまた別にまとめたいと思います。