再生可能エネルギーの普及を促進する「VPP」とは?
VPPとは
太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの普及が進む中、「VPP」について話題にのぼることが増えてきました。
VPPとは、「バーチャルパワープラント:Virtual Power Plant」のことで、日本語で直訳すると「仮想発電所」のことです。
普通、「発電所」というと、火力発電所や原子力発電所のような、大規模な発電所を想像しますよね。
VPPは発電所とは言っても、一つの大規模な発電所ではなく、太陽光発電や風力発電、燃料電池、蓄電池などの比較的小さなエネルギー源をいくつもとりまとめて、まるで一つの発電所のように制御する仮想の発電所のことをいいます。
これまでは、遠く離れた場所にある大型の火力発電所や原子力発電所で発電した電気を、長い送電線を使って需要地に送り、電気を使うことが一般的でした。
しかし、最近では太陽光発電や蓄電池が身近なものになり、わざわざ遠くから電気を運ばなくても、近所でうまく制御するだけで、電気の融通ができる可能性が出てきました。
その技術がVPPというわけですね。
では、VPPについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
VPPのメリット
分散しているエネルギー源をまるで一つの発電所のように扱うVPPには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
VPPの主なメリットには、次のようなものがあります。
VPPのメリットその1: 費用削減
VPPは近隣のエネルギー源をつないで一つの発電所のように運営します。
そのため、火力発電所や原子力発電所のような、大規模な発電所をわざわざ作らなくて済みます。
しかも、遠隔地から需要地に電気を運ぶための送電線を敷く必要もないので、社会的な費用を大幅に減らせる可能性があります。
費用が削減できれば、その分、電気代が安くなることにもつながりますので、これは嬉しいですよね。
VPPのメリットその2: 災害対策
東日本大震災後、国内の原子力発電所は軒並み稼働を停止しました。
その影響で電力が不足し、全国的に節電に取り組んだことは記憶に新しいところです。
私たちの生活には、電気は不可欠な存在です。
その電気が供給されないことは、私たちの日常を脅かすことに直結します。
一部の限られた大型発電所に頼る状況は、万が一震災等が起きた時、全国的に電力の供給がストップしてしまう可能性があります。VPPのように近隣の分散したエネルギー源を活用する場合には、リスクが分散され、災害対策になるといえます。
これは、VPPのメリットといえるでしょう。
VPPのメリットその3: 環境対策
一つの住宅に太陽光発電を設置した場合、その住宅で電気を使わないときには、せっかく太陽光発電で発電した電気が余ってしまうことになります。
これが、VPPでいくつかの住宅がつながっていた場合には、ある住宅で余った電気を、別の住宅で利用するということができるようになります。
こういったことができることから、VPPの利用範囲が広がれば広がるほど、太陽光発電のような再生可能エネルギーの活躍の幅も広がることになります。
しかも、VPPでつながったネットワーク内でディマンドリスポンスも行うことで、省エネの促進を同時に進めることもできます。
ディマンドリスポンスについてはこちらの記事をご覧ください
このように、VPPの普及は、地球環境対策にもつながっていく可能性があるのです。
VPPを実現させるIoTとは
さまざまなメリットをもつVPPですが、VPPが進む背景には、技術の進化や社会の変化があります。
VPPは複数のエネルギー源をまるで一つの発電所のように制御するわけですが、そのためには、インターネットでそれぞれのエネルギー源がつながっていることが前提となります。
インターネットそのものは、かなり前から使われていますが、最近はIoTといって、モノとモノとがインターネットでつながる世の中になってきています。
IoTとは、Internet of Thingsの略で、モノのインターネットという意味です。
あらゆるモノがインターネットにつながることで、モノの状態を確認でき、どこにいても制御が可能となります。
このIoTを使えば、VPPのような電気の高度な制御が実現できるというわけです。
このような技術の進化が、VPPの実用化に一役買っています。
また、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの普及が進んでいることも、VPPが注目される背景となっています。
太陽光発電や風力発電は、化石燃料不要で二酸化炭素の排出もしない、理想的なエネルギーです。
しかしその一方で、天候まかせで不安定という弱点もあります。
そんな再生可能エネルギーの普及が進んでいくと、「不安定」という弱点に対してしっかりと向き合っていかなくてはならなくなります。
この弱点を補う方法になりうるのが、VPPなのです。
原子力発電に対するアレルギーをもつ国民がまだまだ多い中、VPPの活用が、再生可能エネルギー普及にとって、追い風となるわけです。
バーチャルパワープラント構築事業費補助金とは
以上のような背景がある中、国もVPPを後押ししています。
「平成28年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金(バーチャルパワープラント構築実証事業)」という補助金を用意し、VPPの実証事業を支援しています。
平成28年度バーチャルパワープラント構築事業費補助金|経済産業省
事業目的・概要
・東日本大震災後、従来の大規模集中電源に依存した硬直的な供給システムを脱却するとともに、急速に普及している再生可能エネルギーを安定的かつ有効に活用していくことが喫緊の課題となっています。
・こうした状況に対応するため、高度なエネルギーマネジメント技術により、電力グリッド上に散在する①再生可能エネルギー発電設備や②蓄電池等のエネルギー設備、③ディマンドリスポンス等需要家側の取組を統合的に制御し、あたかも一つの発電所(仮想発電所)のように機能させる実証事業等を実施します。
・また、エネルギー設備や需要家等の地理的な分布が与える影響についても検証します。
こうした創エネ、蓄エネ、省エネを最適に組み合わせることにより、再生可能エネルギーの導入拡大、更なる省エネルギー・負荷平準化を図ります。成果目標
・平成28年から平成32年までの5年間の事業を通じて、50MW以上の仮想発電所の制御技術の確立等を目指し、更なる再生可能エネルギー導入拡大を推進します。
・また、節電した電力量を売電できる「ネガワット取引市場」(平成29年までに創設予定)における取引を見据えたアグリゲーターの機器制御技術の高度化を図ります。
こういったことも、VPPの普及促進につながっているわけですね。
まとめ
2016年度は、VPPはまだ実験段階だったと言えますが、今後、実用化がどんどん進んでいくことだと思います。
VPPの実用化が進むことは、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーにとっては、強力な追い風になります。
VPPにとっても、身近な創エネ設備である太陽光発電は重要な位置を占めます。
VPPの普及で今後ますます普及が進む太陽光発電にご興味がある方は、お気軽にソーラーパートナーズまでご相談ください。