【2025年】家庭用ペロブスカイト太陽電池の実用化まで待った方が良い?世界シェア2位の原料ヨウ素が使われた次世代型太陽光発電。
ペロブスカイト太陽電池とは
日本発の再エネ技術として、「ペロブスカイト太陽電池」に注目が集まっています。
太陽電池と言うと屋根上や野原に設置した黒い大型のパネルをイメージする方が多いと思います。
これらはいわゆる「シリコン系太陽電池」と呼ばれるもので、シリコンをベースに作られています。
一方で、「ペロブスカイト太陽電池」は何で作られているのでしょうか。
「ペロブスカイト太陽電池」はペロブスカイト結晶構造と呼ばれる化合物を発電層に使用しています。
このペロブスカイト結晶構造は従来のシリコンとは異質の特徴を持っているのです。
- ペロブスカイトは低コスト化が見込める
- 軽くて柔軟で設置場所が豊富
- 原料のヨウ素は日本が産出国
ペロブスカイト太陽電池の最新ニュース
京都大学が世界最高クラスの変換効率を発表
2024年12月、科学雑誌『ネイチャー』に京都大学やオックスフォード大学のチームがペロブスカイト太陽電池の性能向上についての論文を発表しました。
これには性質の異なるペロブスカイト結晶層を複数重ねる「タンデム型」と呼ばれる手法を使用しています。
変換効率は最大29.7%に達し、従来の24~27%という値を上回りました。
住宅用太陽光発電の分野では、最高クラスの変換効率で22.5%程度ですので(2024年現在)この29%という値が画期的だと分かります。
ペロブスカイト太陽電池で世界最高クラスの発電効率達成、オックスフォード大と京大の研究が融合から引用しました。
一方で、ペロブスカイト型には量産化や耐久性の面で課題があり、まだまだ住宅用太陽光発電の主流にはなっていないということも事実です。
結局、ペロブスカイトの実用化を待った方が良い?
「今すぐに太陽光パネルを設置する」か、「ペロブスカイト太陽電池の実用化を待つ」か迷っている方は多いと思います。
まず太陽光パネルの本場である中国では既にペロブスカイトを販売している企業もありますが、まだ本格的な量産には至っておりません。
先手を打って工場建設を進める大正微納科技などの企業でも量産は2025年になる予定です。
日本国内でも各メーカーが商用化の見通しを立てており、例えば東芝・積水化学・パナソニック等が2025~2026年に量産開始するのではと見立てられています。
一つ注意しなければならないポイントは「量産」が進むと製品価格は安くなると想定できますが、それによってすぐに既存のシリコン太陽電池よりもお得になるとは言い切れない点です。
またペロブスカイト太陽電池の大きなデメリットとして、劣化が早く、現状で寿命が5年程しかない点が挙げられています。長期運用(25年以上)できるシリコン太陽電池と比べて、設置費用が安くなったとしてもトータルの収益では分が悪くなる可能性もあります。
一方で、既存の太陽光パネルの収益性はどうでしょうか。
愛知県で太陽光発電を設置した場合の収支シミュレーション
メーカー | kW数 | 価格 | 回収年数 | 20年目利益 |
---|---|---|---|---|
長州産業(Bシリーズ) CIC (CS-340B81) |
6.12kW | 134.0万円 | 9.03年 | 103.6万円 |
メーカー | kW数 | 価格 |
---|---|---|
長州産業(Bシリーズ) CIC (CS-340B81) |
6.12kW | 134.0万円 |
回収年数 | 20年目利益 | |
9.03年 | 103.6万円 |
電気代削減(年間) | 売電収入(年間) | 導入メリット(年間) |
---|---|---|
70,176円 | 84,010円 | 154,186円 |
収支シミュレーション(万円)
設置費用がどのように回収されるかを示したグラフです。
年数 | 費用 | 導入メリット | メリット(累計) | |
---|---|---|---|---|
0年目 | 134.0万円(設置費用) | 0.0万円 | 0.0万円 | |
1年目 | - | 15.4万円 | 15.4万円 | |
2年目 | - | 15.4万円 | 30.8万円 | |
3年目 | - | 15.4万円 | 46.2万円 | |
4年目 | 2万円(点検費用) | 15.3万円 | 59.5万円 | |
5年目 | - | 15.3万円 | 74.8万円 | |
6年目 | - | 15.3万円 | 90.0万円 | |
7年目 | - | 15.2万円 | 105.3万円 | |
8年目 | 2万円(点検費用) | 15.2万円 | 118.5万円 | |
9年目 | - | 15.2万円 | 133.6万円 | |
10年目 | (設置費用の回収完了) | 15.1万円 | 148.8万円 | |
11年目 | - | 11.6万円 | 160.3万円 | |
12年目 | 2万円(点検費用) | 11.6万円 | 169.9万円 | |
13年目 | - | 11.5万円 | 181.4万円 | |
14年目 | - | 11.5万円 | 192.9万円 | |
15年目 | - | 11.5万円 | 204.4万円 | |
16年目 | 2万円(点検費用) | 11.5万円 | 213.9万円 | |
17年目 | 20万円(パワコン交換) | 11.5万円 | 205.4万円 | |
18年目 | - | 11.4万円 | 216.8万円 | |
19年目 | - | 11.4万円 | 228.3万円 | |
20年目 | 2万円(点検費用) | 11.4万円 | 237.7万円 | |
… | (20年目以降もメリットは出続けます) |
・回収年数=設置費用÷導入メリット
・売電価格: 16.0円/kWh(2024年度中に設置の場合)
・11年目以降の売電価格: 9.0円/kWhと仮定。
・買電価格: 34.0円/kWhを仮定(一般的な家庭の買電価格)
・4年ごとに訪問点検費用2万円を計上
・17年目にパワコン交換費用 20万円を計上(20万円/台×1台)
・毎年0.27%ずつ発電量が劣化していくと仮定。
正確な発電量シミュレーションが必要でしたら見積り依頼をしてください。
こちらは平均的な容量を設置した際のシミュレーションデータです。メンテナンス費用も込みで計算しています。
電気代が高騰し続けている現在では太陽光パネルの収益性は向上しており、おおよそ年間に15万円程度のメリットがあります。(住宅によってこの値は異なります)
耐久性が5年程度のペロブスカイト型と異なり、既存の太陽光パネルの耐久性(企業が保証している期間)は25年~30年程度であり、実際にはそれ以上発電するとも言われている長期運用商品です。
ペロブスカイト型を待つ間に、これだけの収益を得る機会が失われているということは認識すべきでしょう。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
ペロブスカイト太陽電池には大きく分けて4つのメリットがあります。
薄くて軽い
従来のシリコン太陽電池と比較し、ペロブスカイト太陽電池は半導体をカメラのフィルムのように薄く延ばすことができます。
それにより、素材全体の重さを削減でき、例えば外壁のようなこれまでにソーラーパネルを設置できなかった箇所に接地することが可能です。
原料を国内調達できる
ペロブスカイト太陽電池の主原料の一つがヨウ素です。ヨウ素は日本の生産量が世界シェアで2位を占めており、安定供給することが可能です。
太陽光パネルはその原料にインジウム、ガリウム、セレンなどの多くのレアメタルが使われ、残念ながら日本でそれらを産出することができません。
原料調達が国内で出来るということは、国際的な競争力を確保するということに繋がります。
変換効率が高い
上記の通り、「タンデム型」と呼ばれるタイプでは高い変換効率をすでに実現しています。一方でシリコン太陽電池と比較して耐久性が低いという課題はまだ払拭することができていません。
ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた課題
さまざまな用途に利用できて、しかもコストの安いペロブスカイト太陽電池には、とても期待がもてそうです。
そうは言っても、住宅用太陽光発電システムで実用化することを考えると、まだまだ道のりは厳しそうです。
というのも、ペロブスカイト太陽電池には、次のような課題があるからです。
(1) 鉛の使用
実は、ペロブスカイト太陽電池には鉛が使われています。
人体に有害な鉛は、環境関連の法令などでも廃棄や排出が厳しく規制されています。
実用化に向けて、この鉛をどうするのかが大きな課題となります。
(2) 耐久性
ぺロブスカイト太陽電池では5~10年の耐久性が確認されていますが、住宅用太陽光発電は25年以上にわたって使用される機器です。
しかも、屋根の上という、風雨にさらされ、紫外線を浴びる過酷な環境で使われます。
住宅用太陽光発電システムとしての実用化を考えるなら、今回発表されたレベルをはるかに超える耐久性がなければ、話にならないでしょう。
(3) 大型化
国内でいうとパナソニックの研究で作られたペロブスカイト太陽電池は、4ミリ角の大きさです。
小指の先ほどの小さな太陽電池で実現できた発電効率や耐久性を、実用できるレベルの大きさで実現するには、まだまだたくさんのハードルを越えなくてはいけません。
さらにその先には、量産化できるようにしていく必要もあります。
このように考えると、ペロブスカイト太陽電池は夢のような技術ではあるものの、私たちが低コストに利用できるようになるのは、まだまだ先なのかなぁという感じがします。
結晶シリコン太陽電池も、発明されてから50年以上かけて、やっと現在のように少しずつ普及が進んでいる状態になっています。
新しい技術が生まれて、それを利用できるようになるには、大変な時間と労力が必要なんですね。
そう思うと、現在すでに製品として流通している太陽光発電システムをここまで発展させてきた技術者のみなさまに、自然と感謝の気持ちが湧いてきます。
まとめ
未来の世界ではペロブスカイト太陽電池の実用化で、今以上に広い用途で太陽光発電が利用されるようになることでしょう。
しかも、そのペロブスカイト太陽電池が日本発の技術というのも嬉しいところです。
とはいえ、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けては、鉛の使用や、耐久性、大型化といった課題がまだまだあるのも事実です。
もし、現在すでに太陽光発電を設置できる条件が整っているようでしたら、ペロブスカイト太陽電池の実用化を待つよりも、今あるものを導入する方が現実的だと思います。
太陽光発電の導入を検討している方は、お気軽にソーラーパートナーズまでご相談ください。