太陽光発電が台風で剥がれた事例 実は使える保険や補償、パネル廃棄など対処法もご紹介
こんにちは!
「太陽光発電と蓄電池の見積サイト『ソーラーパートナーズ』」記事編集部です。
残念ながら台風で太陽光パネルが飛散する事故が発生しています。
台風で飛散した太陽光パネルのほとんどはいわゆる「産業用」ですが、その理由は何でしょうか。
具体的な事例の紹介とあわせて、万が一パネルが台風で飛散してしまった場合の対処法、適用される保険、壊れたパネルの廃棄方法などをご紹介します。
2010年度以降 台風の発生件数
年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間 |
2010 | 1 | 2 | 5 | 4 | 2 | 14 | |||||||
2011 | 2 | 3 | 4 | 3 | 7 | 1 | 1 | 21 | |||||
2012 | 1 | 1 | 4 | 4 | 5 | 3 | 5 | 1 | 1 | 25 | |||
2013 | 1 | 1 | 4 | 3 | 6 | 8 | 6 | 2 | 31 | ||||
2014 | 2 | 1 | 2 | 2 | 5 | 1 | 5 | 2 | 1 | 2 | 23 | ||
2015 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 2 | 3 | 4 | 5 | 4 | 1 | 1 | 27 |
2016 | 4 | 7 | 7 | 4 | 3 | 1 | 26 | ||||||
2017 | 1 | 1 | 8 | 6 | 3 | 3 | 3 | 2 | 27 | ||||
2018 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | 9 | 4 | 1 | 3 | 29 | |||
2019 | 1 | 1 | 1 | 4 | 5 | 6 | 4 | 6 | 1 | 29 | |||
2020 | 1 | 1 | 8 | 3 | 6 | 3 | 1 | 23 |
上の表のとおり、日本では毎年30件前後もの台風が発生しています。
これだけ多く頻繁に発生しているわけですので、当然、太陽光発電を設置するのであれば台風の影響は無視できません。
事例 台風の影響でソーラーパネルが全て剥がれる
2014年に九州の既に太陽光発電システムを設置済みの方からご相談を頂きました。
「先日の大型台風の直撃を受けて、設置してあったソーラーパネルが全部剥がれて、隣近所にも迷惑をかけた。販売会社に連絡したら自然災害補償に入ってなかったと謝罪してきて、今後どのような対応をとるべきかを弁護士とも相談していると言われているんだけど、こちらはどのようにしたら良いか知恵を借りたい」
という何とも衝撃的な内容でした。
地面に設置した太陽光発電が飛散した例は聞いたことがありますが、「住宅に設置したソーラーパネルが台風で全部が剥がれた」というのは初めて聞きました。
おそらく日本初なのではないかと思います。
幸い隣の家を壊してしまった訳ではないようなのですが、隣の敷地には落ちたらしく植栽やブロックに被害を与えたそうです。
そして、2018年(平成30年)台風21号の記録的暴風により、多くの産業用太陽光発電が崩壊し、太陽光パネルが飛散したケースが報告されました。
なぜこのような事が起きてしまったのか、どのようにしたら防ぐことができるのか。万が一起きてしまった場合の対処方法などをまとめたいと思います。
ソーラーパネルが台風で飛散する原因は「施工」
そもそも、なぜソーラーパネルが台風で飛散するのかというと、施工がきっちりと行われていないからです。
ソーラーパネルは金属フレームと架台のネジによって、地面や屋根に固定されていますが、施工方法が適切でないと当然吹き飛ばされてしまいます。
ソーラーパネルが台風で飛散しないためには『適切な工事』を行えば良いだけなのですが、そう単純な話ではありません。
何をもって『適切な工事』とするのか?という問題が重要なのです。
どういうことかというと、住宅用(住宅の屋根に設置するもの)と産業用(工場の屋根や地面に設置するもの)によって『適切な工事』の基準が変わるからです。
住宅用のソーラーパネルは簡単には飛散しない
住宅用のソーラーパネルは、メーカー保証の条件としてメーカーが施工基準を決めています。
メーカーの施工基準はJIS規格を元にして決められており、秒速60メートルの風速に耐えられるようになっています。
秒速60メートルの風速に耐えられるというのは、50年に1度あるかないかの風速に耐えられる基準です。
つまり、住宅用のソーラーパネルはメーカーの施工基準にあった施工が行われていれば、ソーラーパネルが飛散することはそうそう無いのです。
産業用のソーラーパネルは飛散する可能性が高い
ソーラーパネル飛散の問題はほとんどが産業用の太陽光発電です。
産業用の太陽光発電は、工場の屋根に直接固定したり、空き地に基礎を作ったりスクリューを打って固定しています。
問題は、産業用の太陽光発電にはメーカ保証がないため施工基準を誰も決めておらず、設置者の独断のリスク対策によって施工方法を決めていることです。
太陽光発電は住宅用も産業用も、投資として経済メリットを求めて設置するため、なるべく安く工事を済まそうとします。
きちんとした施工を行うと当然費用が高くなるため、投資効果が低くなってしまいます。
もし設置者が儲け重視で安価で雑な工事を選んで設置をすると、台風や大雨に耐えられず飛散したり、砂が流出して崩れてしまう、ということが起こるのです。
しかしながら産業用の施工基準や安全基準は特に何もなく、問題が起きても現状特に罰則はない状態です。
問題となった2018年の台風21号が記録的暴風でも、半世紀ぶりの記録更新となった大阪市で秒速47.4メートル、福井県敦賀市、石川県金沢市でも観測史上1位となる秒速47.9メートル、44.3メートルでした。
実際に台風によって太陽光パネルが飛ばされてしまった時の対処
飛散したパネルの廃棄方法
太陽光パネルは強化ガラスを使用していますので、通常のガラスのように鋭利な状態で破壊はされず粉々に粉砕されます。
しかし、パネルのフレームや架台は折れ曲がったり、折れて鋭利な状態なものが散見されました。
早急に設置業者に連絡をして、撤去回収をしてもらう必要があります。
しかし残念ながら設置業者が倒産するなどして既に連絡が取れない状態であるケースも多いです。
そういう方は、太陽光発電協会(JPEA)が適正な処理が可能な産業廃棄物中間処理業者の一覧を公表していますので、そちらから該当企業を探し連絡をするのも検討してください。
適正処理(リサイクル)の可能な産業廃棄物中間処理業者名 一覧表|太陽光発電協会
飛散した太陽光発電による感電、漏電に注意
太陽光パネルの一部が飛散したとしても、太陽光発電システム自体は太陽光が当たる限り発電を続けます。
ケーブルが断線している状態での発電は、漏電、感電の恐れがありますので、すぐさま太陽光ブレーカをオフにし、パワーコンディショナ―のスイッチもオフにしてシステム全体の稼働を止めるようにしてください。
またシステムをオフにしたとしても、それまで発電した電気はケーブル内に残っていたり、台風の雨水に浸り感電の恐れもありますので、周囲の片づけの際には乾燥しているもしくは、濡れても絶縁性の低下しない手袋や長靴を使用するようにしてください。
修理費用は自然災害補償で賄える
自然災害補償 一般的な上限金額は300万円
ご自宅のソーラーパネルが全部飛んでしまった方の話に戻します。
まず、この方は修理費用が自己負担になるのかということを気にされていましたが、台風によって太陽光発電の修理が必要になった場合、自然災害補償の対象となります。
自然災害補償は、一般的には上限300万円までが支払われます。
対物、対人は自然災害補償の範囲外
ご相談者は、今回の問題を販売会社が契約時に自然災害補償を付けると言っていたのに付けていなかったことだと認識されていましたが、じつは自然災害補償に入っていたとしても隣家への被害は補償されません。
太陽光発電の自然災害補償で補償されるのはソーラーパネルや機器の損害のみです。
例えば今回とは逆のパターンで、台風時に外部の物体が飛来して、ソーラーパネルを壊した場合は自然災害補償で補償されます。
つまり、ソーラーパネルが飛散して発生した被害には、自然災害補償は適用されないのです。
第三者に与えた被害については『個人賠償責任保険』が適用されることが多いです(後述します)。
太陽光発電の修理は自然災害補償が適用されるはずだが…
今回は太陽光発電システム自体も破損していますので、自然災害補償にちゃんと入っていれば太陽光発電の修理金額に相当する保険金(一般的には上限300万円)が支払われていた「はず」です。
支払われていた「はず」と書いたのは、理由があります。
自然災害補償の対象外になるケース
先にお伝えしたように一般的にソーラーパネルは台風ごときで剥がれないように設計されています。
ところが今回は全部飛んでしまっているので、もしかすると正しい設置金具を使用せずに設置してしまったのではないかと推測したのです。
もしそうであった場合に、仮に自然災害補償に入っていたとしても保険適用がなされたのかどうかが疑わしいので、さきほど「自然災害補償の保険金が支払われていたはず」と記載したのです。
金具が違うと自然災害補償の対象外になる理由
なぜ金具が違うだけで自然災害補償の対象にならなくなるかというと、どの自然災害補償も
『故意または重過失によって生じた損害』は補償対象外としています。
今回のご相談者の家はセキスイハイムのパルフェというシリーズで、太陽光発電業界では太陽光屋泣かせの屋根として有名です。
いわゆる折半屋根なのですが一般的な折半屋根とは少し形状が違います。
そのため、パルフェ専用の金具がないと設置できず、専用金具の仕入れルートが無い会社ですと設置ができないのです。
今回の話はおそらく、パルフェ専用の金具を入手できなかったか、そもそも専用金具が必要であることを認識していなかったために、メーカー指定の施工を実施することができなかった結果起こったのだと思います。
つまり、『故意または重過失によって生じた損害』に該当してしまうため、自然災害補償の対象外になってしまうと思うのです。
最後の砦、瑕疵担保 責任保険
自然災害補償が施工不良によって適用されない場合、もし施工会社が瑕疵担保責任保険に加入していれば、修理の金額が補償される可能性が高いです。
瑕疵担保責任保険は一般的には保険期間が5年の保険で、工事の途中で保険会社による検査があり、万一工事会社が倒産してしまっても、保険期間中は保険会社が補償してくれます。
ただ、瑕疵担保責任保険をつけるには多額の費用がかかってしまうため、瑕疵担保責任保険まで入っている太陽光業者はまだまだ少ないのが現状です。
設置者の方が、施工についてもきちんと考え、業者を選定することが重要です。
近隣への被害は『個人賠償責任保険』が適用される可能性が高い
近隣のお宅に被害を与えてしまった場合、設置者(パネルを飛ばしてしまった方)が被害者(近隣で被害にあった第三者の方)に支払うことになります。
考え方としては例えば、キャッチボールをしていて隣の人の窓ガラスを割ってしまったのと同じ話になり、このようなケースの場合は個人賠償責任保険が適用されることが多いです。
個人賠償責任保険は火災保険と一緒に入っていることが多いので、設置者は一度保険の内容を確認すると良いと思います。
個人賠償責任保険が適用されるまでの流れ
個人賠償責任保険が適用される流れは一般的には以下になります。
被害の状況や保険会社によって流れが変わる場合があるので、必ず保険会社にご確認ください。
個人賠償責任保険が適用される流れ
そもそもソーラーパネルが飛散するようなことは、メーカーの設置基準を守っていれば起こりません。
繰り返しになりますが、太陽光発電の設置業者をきちんと選んで設置していただくことが、設置者の方のリスク回避の一番方法だと思います。
自然災害補償は保険商品で太陽光発電システムを販売する会社が加入する商品です。
設置するお客様は加入できません。
つまり、お客様の手元に保険に加入している証明書みたいなものが届くわけでもありません。
そのため今回のような事が起きた訳です。
さらにいうと、販売会社側が自然災害補償に加入しているかどうかをお客様が確かめる方法はありません。
考えられる回避方法としては、契約書に自然災害補償に加入する事などを明記してもらう事ではないかと思います。
そうすれば仮に加入していなかったとしてもその補償を主張する事ができるからです。
また、最終的には設置者が近隣の被害者の補償を行わなければならないわけですから、設置者の方は、ご自身が加入されている火災保険の内容を、今一度ご確認いただくことをおすすめします。
まとめ
これまで書いてきたように、台風により飛んでしまう可能性のあるパネルは産業用の太陽光発電システムです。
その中でも工場屋根などのではなく、地面に設置されている「野立て」という太陽光発電が一番リスクが高いです。
自分が太陽光発電のオーナーの方は、改めて強風により飛散の恐れがないのかのチェックをすること、周囲に野立ての太陽光パネルがある方はそれを認識し、強風時はなるべくその周囲を歩かない、屋外に出ないようにすることで最悪の事態は回避できます。
今後太陽光パネルによって重大な事故が起きてしまう事がないことを祈ります。
これらか太陽光発電をの設置を検討する方は、とにかく実際に工事する会社が大丈夫なのかどうかをチェックするようにしてください。