なぜ10kW未満の住宅用太陽光発電は買取中止の影響を受けないのか?
10kW未満の太陽光発電が引き続き受付が行われる理由
最近、様々なメディアで「もう再生可能エネルギーは終了だ」というような論調の報道が多いです。
先月、このコラムで2回も九州電力に端を発する再生可能エネルギーの中断問題について書きましたので今週は違う事を書こうと思っていました。
ですが今回は、現在の「太陽光発電は終了」というような雰囲気に少しだけ反論というか、「住宅用太陽光発電システムは、これからもどんどん普及していく」という事を書きたいと思います。
先月(9月末)に、九州電力をはじめとする一部の電力会社が売電申請の新規受付の実質中断を報じました。
その際、引き続き新規受付けを続けるものについても以下のように明記しています。
- 九州電力 10kW未満は通常受付
- 東北電力 50kW未満は通常受付
- 四国電力 10kW未満は通常受付
- 北海道電力10kW未満は通常受付
東北電力が50kW未満はOKとした以外は、九州電力も四国電力も北海道電力も10kW未満を設置OKとしています。
ではなぜ10kW未満の太陽光発電システムだけ対象外となるのでしょうか?
10kW未満の太陽光発電システムの継続されている理由は3つあります。
- 発電設備の規模が小さく、電力会社全体への影響が少ない
- 余剰電力買取制度のため、発電した電気の8割程度しか売電されない
- 余って売電された電気のほとんどが近所の家で使用される
1.発電設備の規模が小さく、電力会社全体への影響が少ない
答えは一言で言うと簡単なのですが、「影響が軽微」だからです。
住宅用の太陽光発電システムの平均設置容量は最新のデータでは新築で4.19kW、既築で4.87kWです。
(※J-PEC(太陽光発電協会)2014年4月~6月データより)
現在規制が始まっている産業用の50kWや100kW、1000kWなどの発電設備と比べると、平均設置容量が4.5kW程度である10kW未満の太陽光発電は規模が小さいのです。
2.余剰電力買取制度のため、発電した電気の8割程度しか売電されない
10kW以上の売電制度は全量買取制度が採られています。
これは太陽光発電システムで発電した電気をすべて電力会社が買い取る制度です。
ですが10kW未満の住宅用太陽光発電システムの売電制度は、全量買取制度ではなく余剰電力買取制度が採られています。
太陽光発電システムで発電した電気は家での使用に優先的に充てられ、余った電気だけが家の外に出ていき売電される仕組みです。
(売電制度についての詳しい説明はこちらのページをご覧ください)
そのため、ただでさえ小さい規模だということに加えて、売電される電力量は太陽光発電システムで発電した電力量よりもさらに少なくなるのです。
実際に太陽光発電で発電した電気がどれくらいの割合で系統へ流れていくのかというと、大体8割程度です。
日中どのくらい家で人が暮らしているか次第ですがだいたい平均して2割ほどを自宅で消費します。
(月の電気代が平均10,000円くらいの家庭で4kW台の太陽光発電を設置している場合)
3.余って売電された電気のほとんどが近所の家で使用される
余って売電された電気はいきなり電線に流れていくわけではありません。
実は、一般家庭の電気は数軒で1つのグループが作られています。
同じグループのうち1軒に太陽光発電が設置されていたとすると、この家で余った電気はまずこのグループ内で使用されることになります。
そしてそれでも余った電気が電線へ流れていくのです。
もし太陽光発電を設置していない、グループ内のほかの家で使い切ってしまえば、電線へは流れていきません。
つまり、10kW未満の住宅用太陽光発電システムは、発電された電気のうち電線に流れていく電力量が圧倒的に少ないのです。
まとめ
今回、九州電力にも直接「なぜ10kW未満の太陽光発電システムは対象外となっているのか」と単刀直入に聞いてみました。
回答はやはり「影響が軽微だから」というものでしたが、併せて「省エネ効果もありますし・・・」と仰っていました。
まさしくその通りだと思います。
余剰電力買取制度には間違いなく省エネ効果があります。
電気を余らせた方が金銭メリットが大きくなる仕組みですので当然日中の電気使用を控えるようになります。
今の日本のエネルギー問題を考えた時に、その必要量を減らすという事も大きなテーマとなります。
やはり創エネと省エネ両方を叶える余剰電力買取制度は本当に素晴らしいと思います。