太陽光発電の容量を50kW未満にしたいのに70kWの太陽光パネルを設置しても大丈夫なのか?
50kW未満の低圧希望なのに70kWの太陽光パネルという提案
低圧の野立て太陽光発電システムを検討している方からご相談がありました。
「低圧ギリギリで考えているんだけど、何社か見積り取ってみたらだいたい52kW~58kWなんだけど、1社70kWの提案をしてきているところがあってだいぶ割安だから悩んでいるんだけどどう思いますか?」
という内容でした。
産業用(10kW以上)の太陽光発電は区分が3つに分かれています。
- 低圧:50kW未満
- 高圧:50kW以上2000kW未満
- 特別高圧:2000kW以上
50kW以上の高圧案件となると費用負担が増えます。
- 電気主任技術者の専任
- キュービクル(変圧器)の設置
- 電力会社への協議申請だけでその設置可・不可に関わらず21万円がかかる
そのため、今回も低圧として申請をしたいという方のご相談です。
低圧は50kW未満なのになぜ50kW以上が可能なのか
今回の相談の主旨は
「他が52kW~58kWのところ、70kWと一つ飛びぬけた容量の提案を受けているが問題ないか」
という事です。
ではそもそもなぜ低圧は50kW未満なのに、どの会社も50kW以上の提案をしているのでしょうか。
電力会社がこの設置容量を判断するのですが、太陽光発電システムの場合この設置容量を表す数値が2つあります。
- 太陽光パネルの出力値の合計
- パワーコンディショナ―の定格出力の合計
電力会社はこの「1.」と「2.」の数値の低い方を設置容量とするというルールになっています。
例えば太陽光パネルの出力値合計が6kW、パワーコンディショナ―(以下パワコン)の定格出力が5.5kWであった場合は5.5kWを設置容量として採用します。
ですから上記の太陽光パネル6kW、パワコン5.5kWのシステムを9つ作成すると以下のようになります。
- 太陽光パネル:6kW×9個=54kW
- パワコン:5.5kW×9個=49.5kW
採用される設置容量がパワコンの設置容量50kW未満ですので、太陽光パネルの合計出力が50kWを超えていても低圧案件とみなされるようになるのです。
パワコンは5.5kWなのになぜ5.5kW以上のパネルが設置できるのか
なぜパワコンの定格出力よりも大きい容量の太陽光パネルを設置できるかと言うと、簡単に言えばそんなに発電しないからです。
太陽光パネルの出力値は公称最大出力と言って、ある特定の環境で計測した数値です。
一番大きな要因としてパネルの表面温度があります。
公称最大出力では太陽光パネルの表面温度が25℃を想定しています。
気温が25℃ではなく、パネル表面温度が25℃です。
これは太陽光が直接当たると不可能な状況です。
そのため、一般的なメーカーでは夏場で20%、春・秋で15%、冬で10%ロスをするとしています。
(熱に強いといわれるパナソニックのHITなどはロスはもう少し少なくなります。)
そしてさらにパネルからパワコンまでのケーブルでのロス、方角や屋根角度によるロスもあります。
ですから10%増しくらいであればまず問題ないので5.5kWパワコンの際に6.0kWの太陽光パネルを設置するというのは通常の事です。
まとめ
その上で今回のご相談の中身を考えてみます。
パワコンの容量、台数は上の例と同じで5.5kWパワコンを9台だそうです。
そうなると9システムですので、太陽光パネルの出力値合計70kWを9で割ると7.77kWとなります。
5.5kWパワコンに7.77kWの太陽光パネルは流石にやり過ぎだと思います。
7.77kWが20%ロスしたとしても6.21kWです。
パワコンの定格出力を完全にオーバーしてしまっています。
せっかく発電した電気も無駄になってしまいますし、仮にオーバーしてない日もパワコンを限界までフルに活動させ続ける事になります。
これではパワコンの故障リスクが高まります。
車でいうと、常に最高速度で走り続けさせているような感じです。
やめた方が良いというアドバイスをしたのですが、当然パネルの枚数が多い方がkWあたりの単価は割安になりますのでその魅力を捨てがたいらしく、どうもあの感じだと70kWの方を選んでしまいそうな気がします・・・。