再生可能エネルギー促進賦課金(再エネ賦課金)の算出に影響する回避可能費用を資源エネルギー庁が発表
資源エネルギー庁が太陽光発電システムの回避可能費用を発表
7月3日(木)に資源エネルギー庁から平成26年6月1日以後に設備認定された太陽光発電システムの回避可能費用が発表されました。
この回避可能費用というのは「電力会社が外部から電力を買い取ったために自分で発電しなくてよくなるので、その電力分を自分で発電していたら発生していたであろう費用」の事です。
「なんだ自分には関係ないな」と思った方、実はこれ、太陽光発電を導入している人と太陽光発電を導入していない人、どちらにも非常に関係がある話なんです。
なぜかというと、この回避可能費用が再生可能エネルギー促進賦課金(太陽光発電などの再生可能エネルギーが普及したときに上がる電気代)の計算方法に密接に関係しているからです。
再生可能エネルギー促進賦課金とはなにか?
太陽光発電システムを含む再生可能エネルギーの普及が進むと、再生可能エネルギー促進賦課金がどんどん増えていくから国民負担が増えると騒がれています。
まずはその理由から説明しようと思います。
今の日本のエネルギーは9割以上を海外からの輸入に頼っているため、対外的なリスクを抱え続けている状態です。
(2010年時点の原子力発電を除く日本のエネルギー自給率はわずか4.4%)
このエネルギーリスクを少しでも和らげるために、多少発電コストが高くても純国産エネルギーである再生可能エネルギーを普及させる必要があります。
そのため国は、再生可能エネルギーに対して高い売電価格(買取価格)を設定することで再生可能エネルギーの発電施設を作った人に金銭的なメリットを与え、再生可能エネルギーの発電施設を増やす政策を行っています。
再生可能エネルギーを高く買い取った分をどこで採算をとっているかというと、再生可能エネルギー促進賦課金という形で国民が負担しています。
(毎月電力会社から送られてくる電気代明細を確認してみて下さい)
この再生可能エネルギー促進賦課金(以下再エネ賦課金)の計算式に、回避可能費が入っているのです。
再エネ賦課金と回避可能費用の関係
再エネの売電価格をそのまますべて国民が負担しているかというと、そうではありません。
売電価格から回避可能費用を除いた分が、再エネ賦課金として電力会社を通じて国民から徴収されます。
回避可能費用は毎月計算され変動します。
例えば2014年3月であれば9.60円です。
この分が売電価格から差し引かれ、再エネ賦課金として国民から徴収されているのです。
回避可能費用の厳密な定義は以下の通りです。
回避可能費用
- 回避可能費用とは、電力会社が再生可能エネルギーを買い取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることが出来た費用をいう。
- 電力会社は再生可能エネルギーの買取りにより上記費用の支出を免れるが、電気料金の原価にはその分の費用が含まれていることから、サーチャージは、これを買取費用から控除し、算出される。
- 回避可能費用の増減要因には、燃料価格の変動、電源構成の変化に加え、将来的には再生可能エネルギーが電力会社の設備を一部代替した場合の固定費の削減が想定される。
- ただし、現時点では、太陽光や風力による発電は天候に左右されるなど丌安定であり、電力会社の発電設備を代替するに至っていないことから、短期的には、燃料価格の変動や電源構成の変化を踏まえた変動費が回避可能費用の対象となる。
再エネ賦課金は電気使用料のお知らせの中に追加費用という形で記載されています。
今後再生可能エネルギーが普及して再エネ賦課金が増えれば、再生可能エネルギーに対する風当たりは当然強くなります。
そのため、この再エネ賦課金をできるだけ正確な算出方法を使って記載することは、再生可能エネルギーに対する印象を左右することになるのです。
再エネ賦課金が少なくなる2つの理由
再エネ賦課金の計算式は以下の通りです。
再エネ賦課金の計算式
再エネ賦課金 | = | 買取費用-回避可能費用+事務費用 |
総需要電力量 |
- 買取費用=買取電力量×買取単価(売電価格)
- 回避可能費用=買取電力量×回避可能費用単価
- 総需要電力量:電力会社が販売した電力量の合計
- 事務費用:費用負担調整機関の事務費
この計算式を見て頂いてお分かりだと思いますが、再エネ賦課金が下がる要素は2つあります。
- 買取費用が下がる
- 回避可能費用が上がる
再エネ賦課金が下がる要素1: 買取費用が減る
買取費用の計算式は
買取費用=買取電力量×買取単価
です。
再生可能エネルギーの発電施設は年々増えていきますので、買取電力量は増える一方です。
ですので『買取単価(売電価格)を下げる』というのが、再エネ賦課金を下げる一つの方法です。
年度ごとに売電価格を下げているのは、再エネの普及を促進するという理由以外に再エネ賦課金を過剰に高くしないという意図もあるのです。
再エネ賦課金が下がる要素2: 回避可能費用が上がる
回避可能費用が上がると再エネ賦課金が下がります。
回避可能費用の計算式は
回避可能費用=買取電力量×回避可能費用単価
です。
つまり、『回避可能費用単価が上がる』ことが、再エネ賦課金が下がることになるのです。
今回の資源エネルギー庁の発表の話は、簡単に言えば回避可能単価が上がったという話で、再エネ賦課金が下がる方向の話になります。
回避可能単価の計算方法の変更
じつは今回資源エネルギー庁から発表された回避可能費用は、3月25日に決定した回避可能単価の計算方法の変更の結果です。
回避可能費用は冒頭にも書きましたが、『電力会社が太陽光発電システムなどが発電した電気を買い取った代わりに自分で火力発電などを動かさなくて済んだ分』の金額です。
今まではこの回避可能費用の計算に全電源平均可変費単価というものを使っていました。
全電源平均可変費単価とは『停止中の原発も一部含めた火力発電や水力発電など、すべての電源の平均』です。
ところが、再エネの電気を買い取るために発電施設を稼働させなくて済むのなら発電単価の高い電源から減らすはずだから、全電源平均可変費単価を使うと回避可能費用は実態よりも低く計算されている、という指摘がありました。
そこでその計算方法が再検討され、いくつかの案から最終的に決まったのが、太陽光発電システムを含む再生可能エネルギーを非変動性再生可能エネルギー電源と変動性再生可能エネルギー電源に分けて計算を行うというものです。
非変動性と変動性の再生可能エネルギー電源とは何か?
ひとくくりに再エネと言っても大きく5種類あります。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電
- バイオマス発電
再エネの中でも水力発電やバイオマス発電、地熱発電は安定的に発電するため、この部分の発電量が増える事は全ての電源に影響します。
逆に太陽光発電システムや風力発電は安定的には発電しません。
そうすると太陽光発電や風力発電が増えても発電の調整が可能な火力発電しか減らす事ができません。
この考え方を基本として水力やバイオマス、地熱など安定的に発電できるものを「非変動性再生可能エネルギー電源」、太陽光や風力を「変動性再生可能エネルギー電源」として分けたのです。
(厳密には太陽光や風力も一部非変動性として計算されています)
そして「非変動性」の方には今まで通り「全電源平均可変費単価」を使用し、「変動性」の方には「火力平均可変単価」を使用するようにしたのです。
買取制度運用ワーキンググループ検討結果p.22|経済産業省
まとめ
結果として現在火力発電は高い石油や天然ガスを使用している事から発電単価が高いため、結果今までより回避可能費用は高く計算されることになりました。
およそ1.26倍となっています。
これによってそのその差額で儲けようとしていた新電力の利益が減る事になります。
電力自由化による新電力が利益を上げる詳しい方法はこちら。
太陽光発電システムを含む再エネが今後も健全に普及していくためには、再エネ賦課金の上昇をある程度抑制していく必要があります。
買取価格の低下はもちろんですが、回避可能費用の適切な計算も必要です。
電力自由化での儲けを期待していた新電力の方々からしたら本当に嫌な流れだと思いますが、再生可能エネルギーに対する正しい認識を持ってもらうための大事な流れだと思います。