色素増感太陽電池 ナノテクノロジーを太陽電池に活用!
色素増感太陽電池ってどんなもの?
酸化物半導体と可視光を吸収する色素分子を組み合わせた電極と、レドックスイオンと含む電解液を用いて発電する湿式の太陽電池です。
材料として結晶シリコン系太陽電池の原料を大量に使用する必要がないため、低環境負荷型の新たな太陽光発電として、他の太陽電池同様、非常に今後が期待されます。
他の太陽光発電とは違い、液体を使用する色素増感太陽電池
発電の原理としては、まず太陽光を受けることで色素分子が電子を放出するところから始まります。発生した電子は半導体に移り、反対の電極まで移動し電解液に流れ込みます。電解液中では、ヨウ素レドックスイオンが待ち構えており、電子を受け取ります。その後ヨウ素レドックスイオンは色素に電子を受け渡します。
ここまでの反応が色素増感太陽光発電の反応(1周期)です。この反応を繰り返すことで、太陽電池として電力を取り出すことが出来るのです。
色素増感太陽電池にはナノテクノロジーが活用されている
この電極に用いる半導体としては、酸化チタンが用いられます。通常の酸化チタンの薄膜電極の厚さは10~15ミクロン(ミクロンはミリメートルの1/1000)ですが、色素増感太陽電池で使用される酸化チタンは、サイズが10~20ナノメートルです。また、酸化チタンはポーラス(多孔質)の構造を持っているため、表面積が格段に大きくなり多くの色素を吸着させることが出来るため、光吸収効率を増大させることが出来るのです。
身の回りで多孔質のものといえば、活性炭があります。浄水器に使用して水の中の不純物を除去したり、ご飯を炊くときにお釜に炭を入れたりすることが出来ます。空気清浄器などにも使用されたりするものです。
色素増感太陽光発電の特性
色素増感太陽光発電の一つの特徴は、吸収する光の幅が広いことです。光はその波長によって、赤外線~可視光線(赤~緑~紫)~紫外線と変化しますが、350ナノメートルの紫外線から900ナノメートルの赤外線までの光に対応します。現状の変換効率では、結晶シリコン系太陽電池や、CIS・CIGS太陽電池にはかなわないのですが、アモルファスシリコン太陽電池の効率には対抗できるレベルに近づいています。
また、太陽光発電に使用される太陽電池は20年30年と太陽光・雨風にさらされるわけですから、耐久性が非常に重要な評価ポイントです。現状では60℃以下で紫外線を当てない、という限定的な条件では10,000時間以上の耐久性を認められています。しかし10,000時間といっても400日程度ですし、実際に屋根に載せて太陽光発電システムとして作動させる時には、80℃以上の高温条件になります。もちろん紫外線も太陽光には含まれていますから、材料の見直しや製造方法の改良によって耐久性を向上させていくことが必要です。
色素増感太陽電池のメリット
- 原料を多く必要としないため、環境負荷が小さい
色素増感太陽電池のデメリット
- 変換効率が低い
- 耐久性が低い
- 現状では希少性が高い物質を使用しなければならない
カテゴリ
単結晶シリコン 多結晶シリコン アモルファスシリコン HIT太陽電池 CIS/CIGS太陽電池 CdTe太陽電池 有機系太陽電池 色素増感太陽電池