【2024年】太陽光発電には発火のリスクがある?もし火災が発生したときに消火できない?
住宅用太陽光発電による火災が懸念される背景
2019年、消費者庁はウェブサイト上において「消費者安全調査委員会 調査報告書『住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等』」を公開しました。
全国の太陽光パネル設置数237万棟に対し、直近9年間で発生した火災件数は127件でした。割合でいうとおおよそ2万分の1となります。
近年、太陽光発電には火災リスクがあると思われるようになった背景には、この発表があります。
しかし、この報告書は「太陽光発電全般について警鐘を鳴らす」というものではありません。
「ごく少数の一部の太陽光発電の設置形態を見直してはどうか」という内容です。
また、問題となっている設置形態の太陽光発電モジュールについても、該当するのは、ごく一部の限られた時期に製造された製品に偏っていますので、全ての製品に火災リスクがあるというわけではありません。
これから太陽光発電を設置する人は業者選びさえしっかりとすれば心配する必要はありません。
また2019年のアスクル倉庫の火災で太陽光パネルが消火活動に支障をきたしたという話もあり、太陽光パネルの設置にリスクを感じている方も少なくありません。
記事の後半では太陽光発電を設置した住宅の消火活動についても触れていきます。
消費者庁が太陽光発電の火災事故に関する報告書を公開
2019年1月28日、消費者庁はウェブサイト上において「消費者安全調査委員会 調査報告書『住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等』」を公開しました。
この報告書では太陽光発電の火災リスクと今後の方針について書かれています。
火災の原因は大きく「モジュール起因」と「ケーブル起因」に分類されています。
また、「モジュール起因」は製品不良、「ケーブル起因」は施工不良が原因とされています。
報告書では主に「モジュール起因」の火災リスクに対する再発防止策が求められています。
火災が問題視されているのは「鋼板等なし型」
また、「モジュール起因」とは言っても、問題視されているのは全ての太陽光発電モジュールではありません。
報告書の中で問題視されているのは「鋼板等なし型」とされる設置形態の太陽光発電に限られます。
なぜ問題視されているのが「鋼板等なし型」に限られるかと言うと、鋼板等なし型のモジュール以外で野地板に延焼した事例はないためです。
「鋼板等なし型」の太陽光発電は全体の4.5%
では、「鋼板等なし型」とはどのような設置形態なのでしょうか。
まず、太陽光発電の設置形態は大きく「屋根置き型」と「屋根材一体型」「その他」に分かれます。
現在の主流は「屋根置き型」で全体の90%、「屋根材一体型」は9%、「その他」は1%です。
屋根材一体型は瓦などの屋根材の上にモジュールを置くのに対して、屋根材一体型は太陽光モジュールが屋根材の役割も果たすため、瓦などの屋根材は設置しないという違いがあります。
今回火災が問題視されている「鋼板等なし型」は、「屋根材一体型」の設置形態の一つで、該当するのは全体のわずか4.5%です。
具体的に「鋼板等なし型」がどのような設置形態なのかというと、屋根材一体型の中でも裏面に鋼板がないモジュールをルーフィング上に直接設置するタイプを指します。
火災リスクは「鋼板等なし型」のごく一部
今回の報告書での消費者庁の意見は、この「『鋼板等なし型』を他の設置形態に切り替えるべきでは」という内容です。
「全ての太陽光発電に火災リスクがある」という話ではありません。
また、この4.5%の「鋼板等なし型」についても、実際に火災が発生したものは特定時期に製造されたものに偏っており、「鋼板等なし型」の全ての太陽光発電モジュールに火災リスクがあるというわけではありません。
上記のアスクルで火災が発生したパネルは2006年以前の限られた時期に製造されていた製品です。
もちろん、10年以上前の製品ですので現在は流通していません。
ちなみに、該当のパネルが発火に至った直接的な原因は特定されていませんが、メーカーは念のため無料点検の対応を進めることを発表しており、きちんと安全優先の対応をしています。
「ケーブル起因」の火災リスクは施工不良が原因
最後に「ケーブル起因」の火災についても触れておきます。
「ケーブル起因」の火災は主に施工不良が原因とされています。
具体的には「ケーブルの挟み込み」「電気設備技術基準に照らし不適切なケーブルの中間接続若しくは延長接続」による火災が報告されています。
今回の報告の施工不良の事例がどのような業者によるものなのかはわかりませんが、施工不良は組織としての業者の体制が根本的な原因となっていることが多いです。
例えば、適切な企業努力でコストダウンをせずに激安価格で契約し、安い工事代で適当な工事をしたり、人件費の安い無資格者やアルバイトに工事をやらせるといった業者は残念ながら存在します。
太陽光発電をこれから導入しようと考えているのであれば、価格だけではなく、工事内容まで目を向けて業者選びをするようにしてください。
ちなみに、ソーラーパートナーズでも「設置工事みまもりサービス」などで認定企業の工事内容のチェックを実施しています。
信頼できる業者探しにお困りであればお気軽にご相談ください。
アスクル倉庫火災の鎮火が遅れたのは、太陽光発電のせい?
2019年、アスクル倉庫の火災がなかなか鎮火されず連日メディアを賑わせることとなりました。
普段弊社もアスクルさんを利用させて頂いてますので、今回の火災は段ボールもあり、そもそも商材で紙が多いだろうから鎮火は大変だろうなと他人事のように思っておりました。
ですが、鎮火が遅れているのは太陽光発電のせいだという声が聞こえてきました。
今回、消防本部は鎮火が遅れている理由として3点挙げていました。
1. 倉庫内に燃焼しやすい商品が多いこと
2. 建物面積が大きいこと
3. 建物の2階と3階に窓がほとんどなく放水が難しいこと
窓がないと消火にどう影響するのかというと、放水が行えないために倉庫内の室温が500度にも上ってしまいます。
なので、倉庫内の消火活動が行えないと報道されました。
開口部が少ない原因としては、太陽光発電が設置されている事が関係していると当社は予測しておりました。
太陽光発電が設置されている建物には、元の開口部が少ないので、消火のための開口部を作る必要があります。
ですが、開口部を作る際に屋上に設置されている太陽光パネルが邪魔をしていると思われます。
太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策|消防研究センター
太陽光発電による感電の恐れ
太陽光パネルで発電した電気は、屋外か屋内のケーブルを通って接続箱まで運ばれます。
消火活動中は当然、水浸し状態になります。
火災によって断線している場合は、放水された水を伝って感電する恐れがあります。
仮に接続箱でスイッチを切ったとしても、切った後に電気が流れなくなるだけで、スイッチを切る前までに流れていた電気はまだ送られています。
また途中で断線していても、太陽光パネルは光が当たる限り発電を続けます。
たとえ表面の強化ガラスが損壊しても、パネル自体が多少損壊していても、発電は続いていますので、水に触れないよう注意を払う必要があります。
「太陽光発電の消火活動では水が使えない」は誤り
つまりここまでの情報をまとめると、太陽光発電の火災に対して放水はできるが、感電には気を付けなければいけないということになります。
実際に住宅新報の取材に対し総務省消防庁消防救急課は
「他の火災と同様に放水で消火している。太陽光パネルだから水を使えないという事実はない。太陽光パネルを設置した住宅火災の放水消火は各消防本部で普通に実施している。」
と回答しています。
参考:
住宅新報
消防庁の「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」
消防庁も「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」という総ページ158ページにもわたる資料をまとめています。
資料の中で、消防車から一斉に棒状の放水を行うと放水された水を伝わって感電する恐れがあるため、棒状注水を行う場合には6メートル以上の十分な距離をとり、基本的には噴霧注水をするように指導しています。
感電自体が、それほど人体に大きな影響を与えないレベルのものだとしても、感電による二次災害の方が危険です。
弊社の施工チーム主任も不注意による感電経験がありますが、いきなりバンと体を揺さぶられるような感覚と言っておりました。
ですので、感電によるショックで梯子など高所からの滑落が考えられる一番のリスクであると思われます。
太陽光発電が設置されている建物での消化活動時の対策
1.感電対策には、手袋や長靴は乾燥しているか、絶縁性の高いもの
太陽光発電が設置されている建物で、家屋の火災鎮火の際は乾燥しているものや濡れても絶縁性の低下しない絶縁性の高い装備(手袋や長靴)を使用することが大事になります。
2.ガラス対策には、ゴーグルなどの防具
また太陽光パネルは、強化ガラスが使用されており、通常は破壊時も粉々に砕けます。
ですが、産業技術総合の太陽光発電研究センターの実験では、あまりの高温にさらされると普通のガラス状態に戻ってしまう事があるということが確認されています。
強化ガラスが破損すると破片が粉々になるのですが、普通のガラスに戻ってしまうと、大きく鋭利な破片となってしまうので大変危険です。
万が一の時に備えて、ゴーグルなどの防具を着用することも必要です。
3.光対策には、ブルーシート
そして、太陽光パネルは取り外してケーブルが繋がっていなかったとしても光が当たれば発電します。
なので、可燃物のそばには放置しないこと、厚手のブルーシートをかぶせておくなど光が当たらないような処置をしておくことが大事です。
まとめ
報告書に「住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等」と記載されているため、一見すると「全ての太陽光発電に火災リスクがある」と誤認してしまいそうですが、むしろ報告書を読んでみると「全ての太陽光発電にリスクがあるわけではない」ということがちゃんと伝わるように、消費者庁が慎重に言葉を選んで資料を作っていることが感じ取れます。
今後、この報告書の内容が、報道によって「全ての太陽光発電に火災リスクがある」という形に歪められないことを願うばかりです。
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